1年ほど前に公開された、ハイレベルなひとり多重録音“モンキー・マジック”（ゴダイゴ）のカバー動画を観た時、日本のジェイコブ・コリアーじゃん、と思った。それからあれよあれよというあいだにメジャーデビューを果たし、「THE FIRST TAKE」出演などでも注目を集めてきたシンガーソングライターのマハラージャン。本作は、『セーラ☆ムン太郎』と『僕のスピな人』の2作のデジタルEPをコンパイルし、エモエモな80’sテイスト“Romantic（ロマンティック）が止まらない”（C-C-Bのカバー）も収録されメジャー初のアルバムである。

日常に追い詰められた現代生活者のギリギリのマインドを、超絶ファンキー＆スピリチュアルな音楽でぶっ飛ばそうとする姿勢は楽しくも泣けるし、“行列”など近作曲で招かれた一流ミュージシャンたちも、マハラージャンの音楽に熱く触発されている手応えがある。実は、とても生真面目で律儀な人なんだろうな。「人生ってなんだ？」という永遠の問いに対し、これまでに見たことのないスタイルで挑む、そんなアーティストである。要注目。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』9月号より