真っ向から音楽に理想を描いている

-真天地開闢集団-ジグザグ『慈愚挫愚 参 -夢幻-』
発売中
ALBUM
-真天地開闢集団-ジグザグ 慈愚挫愚 参 -夢幻-
全12曲、目まぐるしく鮮やかに景色を変えていくジェットコースターのようなアルバムだが、とっ散らかった印象は一切ない。むしろ全体的に統一感を感じさせるのは、あくまでも音楽のクオリティを尊重するバンドの上品な姿勢と巧みなバランス感覚があるからだろう。ともすれば古臭く響きかねないギターサウンドも、プロダクションやアレンジにモダンな感性が反映されることで新鮮に響き、命(Vo・G)の歌声も決してエゴイスティックに主張しすぎることはなく、その艶やかさを残しながら背後の音と調和している。音楽にベッタリと世界観を張りつけるのではなく、ディテールの立体的な蓄積によって、繊細に音楽世界を構築しているバンドであることが、この3rdアルバムを聴くとよくわかる。このバンドには、確かに、音楽を通して見たい景色があるのだと感じる。“Aria”や“死神”のようなバンドとしての強度を感じさせる曲もいいが、“いいこいいこして”や“ナニモシタクナイ”のような一見ネタにも受け取れそうな楽曲に、このバンドの人間的かつ本質的な欲望と目的が表れているように思えた。(天野史彬)

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