誰も何も分かってないよ

WurtS『ワンス・アポン・ア・リバイバル』
発売中
ALBUM
WurtS ワンス・アポン・ア・リバイバル
初めてWurtSの音楽を聴いた時から頭に浮かんでいるイメージがある。それは、アラン・シリトーの『長距離走者の孤独』の主人公のように、観衆に見守られる中、マラソンのゴール手前で立ち止まることで、自分にかけられたくだらない期待をすべて鮮やかに裏切り、世界中の欺瞞に満ちた紳士淑女たちに中指を立てて唾を吐きかけてみせる繊細で痛快な不良少年の姿。「研究者」を名乗り、戦略的な活動を展開する彼の姿にそうしたイメージは持たれづらいかもしれないが、しかし、私にとってWurtSはそんな痛快な不良なのである。

これが1stアルバムとなる。ギターもビートも気持ちのいい音が鳴っているが、「分かってないよ」――結局、この一言に尽きるような気がしている。そうだよ、俺たちは何も分かってないよ。分かっていないから、俺たちはこんなに悲しくて、こんなに自由なんだよ。バンドをバックに歌うヤング・サグが何かの単なるリバイバルではないように、WurtSの音楽も、本人が思っている以上に「リバイバル」という言葉には収まらないんじゃないかと思う。(天野史彬)

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