衝動的な感情に宿る確かな希望
東京スカパラダイスオーケストラ『Free Free Free feat.幾田りら』
発売中
SINGLE
YOASOBIのikura(Vo)としてもお馴染みの幾田りらがタイトル曲に参加。歌声と楽器の音色を交わし合う当事者同士の喜びが、耳を傾けている我々リスナーに幸せのお裾分けをたっぷりしてくれる。描かれているテーマの捉え方に関しては様々な言い方ができそうだが、端的に表すならば「直感的なワクワクって、すごくいいよね?」ということだと思う。無邪気なときめきは細かな思考を経ないで湧き起こる感情であるがゆえに、緻密に積み上げる論理的思考よりも速度が圧倒的に速い。求める何かへと近づく道のりを確かなものにするためには理詰めの分析や検証も当然必要だが、それらは実際に動き始めたあとにいくらでも重ねられる。仕事、遊び、学問、人間関係など、日々の様々な営みの根本となる衝動を示す言葉=《希求》が繰り返される様が、大空に浮かんでどこかへと自由に飛んで行く「気球」にも聞こえてくるのが、なんだかとても心地よい。すべての起点となる衝動の尊さを《何故かみんなが/明日が来ると/信じてること自体が希望なんだ》と歌っている点も含めて、とても未来を感じさせてくれる曲だ。(田中大)
『ROCKIN'ON JAPAN』9月号より
2022.08.05 08:00