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若い読者にはむしろナンセンスに思える話かもしれないが、その昔、ポップ音楽シーンには高い音域の声や幅広いオクターブの歌唱こそ正義とされる時代があった。いわゆる「高音厨」レベルの突き抜けた価値観であれば楽しめもするのだが、世間がこぞって特定の声域だけを称賛する風潮は余りにも不自由だし、不気味だ。その意味で、低音イケボのポップソングが正しく評価される今日は健全だと思えるし、この弌誠(いっせい)のような妖艶さを振り撒く個性の活躍は喜ばしい。ゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』のキャラクターであるエレン・ジョーにインスパイアされた楽曲で、メイドコスプレ動画や歌ってみた動画も量産中。弌誠は決して低音域だけを持ち味にしているシンガーソングライターではなく幅広い歌唱表現を備えているのだが、この曲に限ってはキャラクターとリンクした表現がキャッチーで見事だ。弌誠になりきった気分で迂闊にカラオケで歌おうものなら即キモがられるトラップになっているところまで含めて痛快である。(小池宏和)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年1月号より)
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