その一瞬に私たちはいる

Vaundy『mabataki』
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Vaundy mabataki
曲の冒頭から響く、美しく勇猛果敢なストリングスが導くのは、しかし壮大な勇者の物語ではなく、ひとりのちっぽけな人間が紡ぐ、憂いと問い。人間の悲しみを思い、誰も明確な答えは持ち得ないと知りながら、それでも問いを投げる――この切実な一曲が記念すべき日本武道館公演で初披露されたことは、今のVaundyがどんなアーティストであるかを端的に物語っている。彼はもはやヒットメイカーの枠を超えている。きっと彼には、彼の表現すべきことが見えている。

《もし何も/忘れられない世界で/出会い会ってしまったら/憎み合うのはやめるだろうか》――子どものような、それ故に本気の問いで始まる歌。祈りとも無力感ともとれる言葉たちの中で、《もう僕が先に銃を捨てよう》という決意が、誰に強要するでもなく、独白のように淡く高潔に輝く。この曲は何故“mabataki”とローマ字で名づけられたのか、理由は知らないが、異国の戦地にいる人々にも、スマホの奥にいる人々にも、そして私やあなたにも等しくある、目を閉じて開くその一瞬に、Vaundyは普遍的な繋がりを見たのかもしれない。(天野史彬)

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