滑稽なほどに、愛を信じている

Tele『Véranda』
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Tele Véranda
アルバム『NEW BORN GHOST』の最後を飾る“ghost”で《あなたにぼくが見えていたら、/もう少し空は綺麗だ。》と歌ったTeleこと谷口喜多朗は、この新曲“Véranda”でもこう歌う――《愛はここにあんぜ。/まだ見えない?》。谷口にとって「見えているか、見えていないか」は重要なポイントなのだろう。彼は、「世の中の人々にはもっと見るべきものがある」と思っているのかもしれない。そうは言いつつ、この新曲は《僕は君のベランダを知らない。/あの部屋では遂に煙草を吸わなかったから。》と歌い出される。愛の在り処を高らかに言い切るこの主人公にも、見ることができないものがある。そして、見たくなかったけど見えてしまうものもある。《金糸雀色のカーテンについた、/真っ黒い点から目が離せないや!》。ここに悲しみとおかしみがある。

爽やかなメロディに乗せて、愛を信じる主人公が孤独と喪失の現実を前に戸惑い、強がる姿が歌われる。窓いっぱいの愛が降り注ぐラストは妄想なのか、本気なのか。どちらにせよ、ずっこけながらも愛に向かって全力で逆走する、その滑稽さと切実さに、僕は泣く。(天野史彬)

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