「ありたい自分であろうとすること、理想の自分でいようとすることは、嘘をついているのと同義だ」と言っている人に出会ったことがある。確かに理想の自分であろうとする自分は、等身大よりもちょっと背伸びをしているから、本来の自分とは言えないかもしれない。だが自分の気持ちに嘘はついていないし、この嘘が嘘のままである確証だってない。そもそも自分の何が本当か嘘なのか、曖昧で難しい。それならば自分の理想のフィクションを、この身で成し遂げてしまえばいいじゃないか。それはどんなノンフィクションよりも気高く美しいはずだ。
2022年を締めくくるデジタルシングルにほとばしるのは、自分の美学を貫き通すという決意表明。軽やかさの中に鋭さを内包したトラックに乗る、自分が憧れるロックスターという概念へ何度も訴えかけるボーカルは非常に切実で純粋だ。跳ねたピアノがシンボリックなソロプロジェクトならではの自由なアレンジと、ロックバンドで培った生演奏の説得力と血が通う音色は、彼の人生そのもの。歪んだギターでしか伝えられない情熱が胸をかきむしる。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より)
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