すべての楽曲を通して自分たちの存在意義を高らかに示すような、まさに渾身のメジャーデビューアルバムだ。特筆すべきは、パンキッシュに弾ける快活なバンドサウンドを推進力にしながら、リスナーの心の奥底をめがけてまっすぐ響く中野未悠（Vo）の歌声。その鮮烈な歌声は、すべての言葉を決して溢すことなくリスナーに伝えようとする揺るぎない意志を感じさせる。今作の口火を切る“ココロ”で、彼女はアンセミックな輝きを放つメロディに乗せて《どんな未来でも／怯えなくていいよ》と歌う。また、《君を優しく包み込んで／悲しみだけ掬って君を守れる歌》（“ウォールフラワー”）や、《ロックバンドなら／生きる力になりたい》（“ロックバンドなら （Orbital ver.）”）といった言葉たちが象徴的なように、彼女たちは「自分たちは何を歌い届けるべきか」が既に明確であり、だからこそ、歌にもサウンドにも一切の迷いがない。きっと4人は、何よりも強く、誰にも負けない深度で、ロックバンドの可能性を信じているのだろう。今作が、4人と同じようにロックバンドを信じるすべてのリスナーに届くことを願う。（松本侃士）

（『ROCKIN'ON JAPAN』2023年7月号より抜粋）

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