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ファンタジックでありながらもリアリティに富み、ロマンチシズムに溢れながら隅々までエモーショナル。「夏」と「恋」という色褪せることのない往年の掛け算を、「いつも海の中で過ごしているマーメイドが、憧れの地である陸のフェス会場へと王子様とともに赴き、楽しむうちに足の痛みも忘れて跳び上がる」という斬新な物語でコンパイルする。情景がありありと浮かび上がる歌詞表現もさることながら、そのムードまでも立ちのぼらせるのはサウンドデザインだ。憂いのあるメロディと、肌にまとわりつく熱気を落とし込んだレゲエテイストのアレンジは日本の夏を想起させ、詩羽も凛々しさとキュートを使い分けた声色で登場人物2名の存在を描く。興奮と比例して盛り上がりを見せるドラムンベースは、憧れを目の前にした高揚と清涼感を十二分に体現していると言っていい。水カンが得意とする「童話の現代風解釈」の中でも、高いピュア度を誇る一曲。我々が夏に抱くときめきや幻想を、より鮮やかに染め上げる。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)
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