稀有な芸術家、今必要な問い

Bialystocks『Branches』
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芸術にできることとは何かという問いに、様々な角度からとことん向き合っているバンドだと思う。映画監督も務める甫木元空(Vo)と、ジャズをベースに自由な発想で音を構築する菊池剛(Key)によるBialystocks。新曲“Branches”は《話はまだ終わらない》というフレーズから始まり、サビ前でもそれがリフレインする――私たちは対話から逃げていないだろうか。めんどくさがっていないだろうか。正解を求めすぎてはないだろうか。さらに中盤では《嵐はまだ》というフレーズのリフレインのうしろで何かが囁かれている――はっきりと耳に入ってくるもの以外をスルーしてしまってはいないだろうか。そんな問いが身体を巡る。勝手ながら私は、曲全体を通して是枝裕和監督最新作『怪物』を観た時に似た感覚をもらった。約1分半のアウトロにも、光と瑞々しさに包まれる中で「世界は変われるのか」が投げかけられる映画のラストシーンと近い風景を見た。現代を見つめたうえで、今必要な問いが美しく施された作品だと思う。(矢島由佳子)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)


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