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バンド全体の表現力の広がりとソングライティングの深まりを示す最新作。1曲目の“涙ばっかのヒロインさん”は、インパクトがかなり強い。依存や束縛といった負の感情と向き合うことから逃れられない「恋愛」という非常に厄介な営みの描写とキャッチーなメロディのコントラストは、何度も繰り返し噛み締めたくなる。きれいな要素ばかりでもない恋愛をぼやくかのようなトーンを帯びつつも、それを味わい深い機微としても捉えている様が伝わってくるのが、この曲の大きな魅力だ。適度な毒気を粋なスパイスにしながらどこか温かなものを醸し出す作風は、このバンドがもともと持っている部分だが、さらに素敵な色合いを帯びつつあるのを感じる。スキャットを交えつつ音の気持ちのよい響きを満載した“怪火”、報われなかった恋の軌跡を辿る主人公の心情の吐露が、豊かな物語を浮き彫りにしている“不完ロマンス”など、他の曲の切れ味もすごい。昨年12月のメジャーデビューを経て、bokula.は成長期に突入しているのだと思う。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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