湿地に咲くミステリアスな花

シルヴァーサン・ピックアップス『スウーン』
2009年07月22日発売
ALBUM
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやスマッシング・パンプキンズの後継バンドといったキャッチコピーとともに話題になったデビュー作に続く2nd。もともと明るいとか華やかとかいう言葉が似合うバンドでは決してなかったが、今回は前作に輪をかけて地を這うようなダークさが充ちている。この2年に起こった様々な怒りや悲しみを土台にしたエモーショナルな作品だと本人達は語っているが、とはいってもそういった負の感情をぶちまけた個人的な作品ではなく、客観的にしっかりと成立させている。たとえば“パニック・スウィッチ”のギターでの動とストリングスとボーカルの静という二層、そしてリリックでより内側へ潜るという多面構造で、自身が面した混沌の状況を理路整然と表現するということを(なんとも矛盾した描写にはなるが)やってのけるのだ。それは感情的でありながら知的な彼らだからこそ出来ることである。孤独感といったネガティブなものを土壌としながら、決して自分達自身はその毒素に中らない。ただ、その毒を作品に昇華させていくのに十分なキャパと才能があるバンドなのだと確信させてくれる一枚。(上田南)