ぷぅーっちゃはんぞんみー!というおネエちゃんのエロ・リフレインが刺激的なタイトル曲で幕を開け、デペッシュ・モードのカバー“ジャスト・キャント・ゲット・イナフ”をやってみせたかと思うと、メジャー・レザーやキッド・クディ、果てはm-floのVERBALまでをフィーチャーした勝負トラックをずらっと並べ、しまいにはベートーベンの『運命』まで引用して盛り上げてしまうという、イタリア出身のデュオ、クルッカーズのファースト。完全に現場感覚の悪ノリで突っ走った、チキンレースみたいなアルバムである。先のフジ・ロックでは朝4時という登場時間もあって超満員とまではいかなかったが(めっちゃ楽しかったぞ)、これは現場で感じないとダメだ。フィジェット・ハウスだのイタロ・ディスコだのといったタームなど一瞬で置き去りである。rockin'on2009年9月号でインタビューしたブラッディ・ビートルーツもそうだが、このあたりのアゲっぱなし感は、フランスやUKのアクトにはなかなかない。レビュアー泣かせではあるけれども、アートじゃねえんだよダンス・ミュージックは、という姿勢がこのジャケットにも表れている。(小川智宏)