【インタビュー】BRAHMANはなぜ結成30周年、7年ぶりのアルバムで自分たちのパンク/ハードコアの核を青くまっすぐ鳴らしたのか? TOSHI-LOWが語る

【インタビュー】BRAHMANはなぜ結成30周年、7年ぶりのアルバムで自分たちのパンク/ハードコアの核を青くまっすぐ鳴らしたのか? TOSHI-LOWが語る
昨年11月4日に横浜BUNTAIで4時間75曲をノンストップで演奏するライブ「六梵全書」を行い、今年2月26日に7年ぶりのニューアルバム『viraha』をリリース、3月から全28都市を回るツアーをスタート、そして11月には幕張メッセで10年ぶりに「尽未来祭」を開催。今年、結成30周年を迎えて活発に動き続けているBRAHMANだが、なんと言っても、この『viraha』というアルバムが、僕らがBRAHMANに求めるパンク/ハードコアな魅力がこれでもかというくらい凝縮されつつ、同時に音楽的にも、メッセージとしても、言葉にならないエモーションという意味でも新鮮な発見に溢れたアルバムになっていることに注目してほしい。このアルバムを引っ提げて、BRAHMANが、改めてこれまでの歩みにも、今という時代にも正面から向き合って、あの最強のライブパフォーマンスを繰り広げる──その果てにある景色をしっかり見届けていきたいと強烈に思った。今のBRAHMANがどのようなフェイズにいるのかを、TOSHI-LOWが語り尽くしてくれた。

インタビュー=古河晋 撮影=Tsukasa Miyoshi (Showcase)


いろんな歌を歌えるようになっていったけど結局、俺はパンクでやりたいんだなっていう。そのための声だったり喉だっていう

──7年ぶりのアルバム『viraha』を聴かせてもらったんですが、めちゃくちゃいいアルバムです。ちゃんとBRAHMANのアルバムでありながら新しい要素もたくさん入ってる。

入ってる?

──この7年間のプラスの部分がすごく入ってると思います。あと30周年ならではの部分も入っていて。そこには今の年齢なりの青い部分も入っていると思います。

青い部分はそうかもね。自分でも思う。

──そういう新たな発見が多いアルバムとして聴いたんですけど。そもそも7年前、『梵唄 -bonbai-』を出したあとは、次のBRAHMANのアルバムって想像できてなかったですよね。

まったくね。

──この7年間いろいろな活動をしてきてTOSHI-LOWさんの中でのBRAHMANっていうバンドの立ち位置が変わったりはあったんですか?

7年前って言うと何年だっけ?

──2018年。日本武道館のライブをやったり。

そうか。武道館やったとき、ちょうどその前に俺、喉を手術したのもあって。あそこから声に対する感覚が全部変わったの。今まで普通にあったものがなくなって、ひと言目を発したときから「あ、こっから声が出てるんだ」って。初めてそこから存在を感じて。だから、もしかしたらバンドにおけるっていうよりは、歌っていうものに関して以前とまったく感覚が違った7年だったかもしれない。一個一個の音とか、一個一個のメロディ──要は喉を通じて出るものに関して、自分が出してるってことに初めて気づくのさ。今までは、ただ投げつけてたものが「こっから出てるんだ、じゃあこうすればもっとこうできるかも」っていうのを、今回は一回も当てずっぽうにやってないの。それで毎日工夫するから、毎日感覚が変わるし。今でもそうなの。

──すごい変化ですね!

まっすぐ歌ったらまっすぐ出るかなあとか。首だけちょっと引いてみたらラクになるかなあとか。それが延々と続いている7年だった気がする。それで、いろんなのが歌えるようにもなったし。以前の俺のイメージにないゆっくりなバラード的なものとか。コロナのときにゆっくりな曲だけやったりして。結局、どんどん歌えるようになっていって。でも「思ったより、上手いっすね」とか言われても全然嬉しくなくって。結局、自分が歌いたい理由がそこじゃなかったんだよね。俺が好きな、パンクでやりたいんだなっていう。

──ああ、なるほど。

そのための声だったり喉だっていう。基本はそこなんだなって。OAUでやってることも面白いし、ああいう曲をやりたくないとかではなくって。じゃあ、もう一回BRAHMANに戻ったときにどう出てくんだろう?みたいなところに自分のやりたい最大のことがあるというか。歌手になりたいわけじゃないんだよね。バンドのボーカルになりたいというか。

【インタビュー】BRAHMANはなぜ結成30周年、7年ぶりのアルバムで自分たちのパンク/ハードコアの核を青くまっすぐ鳴らしたのか? TOSHI-LOWが語る

逃れられないこともあるじゃん。出会いとか別れとか。それに対しても理屈づけしなくてもいいんじゃないかなって

──いつ頃から、パンクとかBRAHMANに今の歌を活かしたいと思ったんですか?

去年ぐらいじゃない?(笑)。いつも、どんなアルバムを作ろうってことを考えて作ってないんだけど、大まかに、すごい壮大な曲とかバラードとかはやんなくっていいなって思ってて。みんなも俺も3拍子的な、“今夜”みたいな曲を作ろうとも思わなかったし。メンバーも当ててくる音が、ビートの効いた感じで。楽曲もどんどん短くなってくる。様式美的なギターソロもないし。エッジの立った当たりの強いものの中に、パンクでメロディもあるみたいなところにみんな向かってて。やっぱ、この7年とか、それ以前にもういろんなことやったっていうのもあんのかな。自分たちのやりたいことをシンプルに並べていったら、こういうアルバムになった。なんでもありの音楽をやってるんだけど、その中でも選んでやっている感覚が強いところの筆頭にパンク、ハードコアっていうのはあって。そこに色づけとして民族っぽい音楽があるから。そういう意味では、新しい音楽を探しに行ったりはしていなくて自分たちの好きなものを好きだねって言っている。だからさっき「新しくも感じた」って言ったのは、逆に訊きたいけどね。

──たとえば “恒星天”“春を待つ人”“charon”あたりの流れで言うとメロディが明るい。

ああ、ほんと。

──重い音なんだけど、すごく勢いを感じたりとか。明るい軽やかなタッチの中でBRAHMANがずっと変わらず歌ってきたようなことを表現してるのがまず新しいと思ったのと。

おお。

──あとアルバム後半のほうで言うと“知らぬ存ぜぬ”“最後の少年”“笛吹かぬとも踊る”あたりは、単純にあんまり聴いたことない音楽でした。BRAHMANでもあまり聴いたことないタイプの音楽なんだけど、TOSHI-LOWさんやメンバーの中には、なんとなく10代とかに好きだった音楽を改めて入れてるのかなって思ったし。G-FREAK(FACTORY)の茂木さんの声が入ってきたとき新しい感覚でもあったんだけど、BRAHMANの音楽にめちゃめちゃ合ってる感じもして。

そうだね。

──あとは“SURVIVOR'S GUILT”で、ちょっと昔のBRAHMANも感じたあと、”Slow Dance"を挟んでモーターヘッドのカバーがいきなりストレートに入ってくるのも新しく感じました。

いやいや、よくわかった。やっぱり、気恥ずかしさみたいなのがあって、長くやってると出てくるんだけど。これはダメじゃん、ダサいじゃんとか。歌詞に関してもそうなんだけど。でも、それをできるだけ今回は排除していったというか。それが個人的にはデカいかな。「青い部分」って言ったけど「いいじゃん青くて」っていうのは思った。若いときは、その青さを必死に隠して、わざとおっさん化するっていうか「どっしりした大人になるんだ、俺たちは」ってやってきてしまってたから。むしろ今はほんとにおっさんになってきたし、おっさんを隠す必要もない。で、おっさんになってみたら心はあんま変わってなくって。俺らがあのとき思ってた50歳の大人みたいに素晴らしい大人になったかっていうと、別に10代のときに考えていたラーメン、カレー、バイク、ちょっとスケベなことみたいなところから何も変わらない。一方で逃れられないこともあるじゃん。出会いとか別れとか。それに対してもいろいろ意味づけしようとか、知恵を借りて自分で思っていたことが「いや、悲しいっていうことは悲しいでいいじゃん」ってだんだん思ってきて。そこに理由はない……理由はあるんだよ。あるんだけど、理屈づけしなくてもいいんじゃないかなって。それを素直に出すのが青さだと思うし。青の理由はそこかな。


──まさにそれが出てるのがBRAHMANの作品として新しい感じがします。それが『A FORLORN HOPE』から『ANTINOMY』の時期のBRAHMANとも違うし、『超克』『梵唄 -bonbai-』とも違う。

だって頭悪ぃじゃん、“(最後の)少年”とか。でも、もうひとり頭が悪い大人がいたから歌ってもらおうって(笑)。

──それが茂木さん(笑)。

むっちゃ嵌った(笑)。一回みんなで録ったあとに編集し直して、スタジオ入ってひとりで歌入れし直しているときに『ここ、茂木だな』って。この青さを共有できる仲間意識もあるし。俺はボーカルのシーンにいるから、他のボーカルとステージ外で会うことも多いんだけど、ほとんどバカだから。クソバカだから(笑)。ただ歌を歌うことにおいて、みんなイメージを膨らませて、この人はどんだけすごい人なんだろうって思うんだけど心を開いたら、バカだし、少年だし、俺と考えてること変わんねえんだなって思うことも多い。同世代とちょっと上に関しては、わかる。下はわかんないけど。

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