思春期は終わり、大人の季節へ

ライトスピード・チャンピオン『ライフ・イズ・スウィート! ナイス・トゥ・ミート・ユー』
2010年02月24日発売
ALBUM
ニュー・レイヴを先駆けたテスト・アイシクルズ解散後、一転してアコギを構え、まるでアメコミのヒーローみたいな名前を名乗りソロ・デビューを飾ったライトスピード・チャンピオンことデヴ・ハインズ。その変わり身の鮮やかさもさることながら、1stはブライト・アイズ周辺のサドル・クリーク人脈と制作するなど、何から何まで意外というか異例尽くしで驚きの連続だった。本作は2年ぶりの2nd。その音楽性は、デビュー時のローファイ感漂うファニーなフォーク・ポップから、音の表情もスケール感も大きな変化と飛躍を遂げている。「70年代のポップスやプログレを変換してグランジを通過させたら、カントリーとかオーケストラっぽくなった」なんて話してた1stに対し、今作は構成もアレンジも豪華でクラシカルな佇まい。ピアノとキーボードが曲の基礎を作り、そこにストリングスや、そしてもちろんギターを交えながら、重厚感と広がりをたたえたサウンド/メロディが紡がれていく。デヴのボーカルも、まるで往年のスタンダードを歌い上げるかのように艶やかで深い。シンガー/ソングライターとしての確かな成長を刻んだ渾身作。(天井潤之介)