まもなく9月中旬から下旬にかけて、イエスが4都市6公演のジャパンツアーを敢行する。来日は2年ぶり、メンバー5人は不動ということなので、今回はスルーもありかなと思っている方がいらっしゃれば、それでは絶対に後悔しますよと言っておきたい。
前回は、この新体制になっての第1作『ザ・クエスト』を出した翌年で、しかも長年バンドを支えてきたアラン・ホワイト(Dr)が急逝した直後であり、パフォーマンスは磐石とまでは言い難かった(それでもあの超難曲=“危機”を完全再現していたのだから天晴れではあったのだが)。しかし今や、バンドは明らかに一つ上の次元へ到達している。デビュー55周年にして、新生イエスとしての美しいルネッサンスを成し遂げたのだ。
8月7日発売のロッキングオン9月号には、御大スティーヴ・ハウ(G)がその揺るぎない確信を語り尽くしたロングインタビューが掲載される。
今年5月にリリースされた最新作『ミラー・トゥ・ザ・スカイ』では、アランからバトンを受け継いだジェイ・シェレンがイエス印の卓越したドラミングをマスターすると共に、ボーカルのジェイ・デイヴィソン、ベースのビリー・シャーウッドが70年代黄金期を彷彿させるパフォーマンスを極め、ジェフ・ダウンズ(Key)はますます芳醇な味わいを深め、ハウ先生のギターは呆れるほどのスケール感と斬れ味を見せつけてくれる。バンドが放つオーラは、眩いほどだ。
その自信を裏づけるのが、ハウ先生が「イエスの最高の楽曲を集大成した、完璧なもの」と、インタビューの中で当たり前のようにさらっと語った今回のセットリスト。彼が自らエディットしたロック史上屈指の超大作『海洋地形学の物語』の凝縮バージョンをはじめ、既に各方面で話題沸騰中のセットなのだが、この境地に至るまでにどんなドラマがあったのか? 9月号のインタビューを読めば、来日公演の楽しみが倍増することをお約束する。
そのうえ、今回のジャパンツアー前夜祭であるかのように、このところイエス関連のリリースラッシュが相次いでいる。
イエスの黄金期到来を決定づけた歴史的名盤『こわれもの』(1971年)の永久保存バージョンとも言える『こわれもの【スーパー・デラックス・エディション】』(4CD+ブルーレイ+1LP)をはじめ、イエスから派生したスーパーバンド:アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウ(ABWH)唯一のアルバム『閃光』(1989年)の日本初レコード化、さらには、当時のクリス・スクワイア(B)率いるイエスとABWHが合体した記念碑的作品『結晶』(1991年)までも、日本初のレコード化が実現したのだ。
個人的に興味深いのは、プログレッシブロックの守護神であるイエスというスーパーアイコンの波乱に富んだ物語を象徴する2つの傑作:『閃光』と『結晶』のレコード化だ。どちらもカラーヴァイナル仕様(『閃光』はレッド/『結晶』はブルー)となっていて、それぞれが2枚組になったことで音のクオリティが格段にグレードアップしている。共に、レア音源のボーナストラックが収録されているのも要注目。リリースは、来日直前の9月4日だ。
そして、つい先日、ほかならぬハウ先生が9月27日にソロ最新作『Guitarscape』をリリースすることが発表された。愛息ディラン・ハウ(Dr)とのコラボ作で、御大自身は各種ギターにベース、キーボードをこなし、全曲のライティングとプロデュースを行っているそうだ。
まさに今年の9月は、まぎれもなくイエスの大祝祭になるだろう。(茂木信介)
イエスのインタビュー記事が掲載されるロッキング・オン9月号