すごいアルバムだ。もともとアヒトイナザワは「カオス」や「錯乱」と書いて「ポップ」と読む人だったし、だからこそVOLAのエレクトロ・ディスコ・パンクはいつだってトチ狂ったテンションを放射していたのだが、アルペジエイターなどを駆使してよりエレクトロに踏み込んだ今作から浮かび上がるのは、本気で「戦争」を描こうとするアヒトの意志だ。というか、「都市の狂騒」をダンス・ロックで描くのではなく、その音楽世界の中で灰色の東京の風景まるごと戦争という名のカオスに叩き込み、その果てに極上のポップ地獄を築き上げようとしている。よりタフに鍛え上がった電子の爆音の中で《未来がここで始まるかな?/開戦前夜の気分みたいさ》(“THANK YOU MY FORCE”)とか《敵前逃亡しないのかい? 開戦前夜のLast chance》(“Panic in the tokyo”)とか軽やかに歌いながら、アヒトの目にはこの都会がエゴと無力が渦巻く原色の戦場に見えて仕方ないのだろう。だからこそ彼は、ダンス・ロックで愛を歌い「今」を憂う。VOLAの音楽がいよいよ壮絶な次元へ突入したことを厳然と示す力作。(高橋智樹)