『Family Record』と名づけられた、ピープルの2ndアルバム。曲中に「パパ」「ママ」「子供」「家」といった単語は見つけられるが、明確な物語を読み取ることは不可能だ。ただ私が感じるのは、家族という概念が喚起させる圧倒的な「血」の匂いである。人間は誰しも生死をコントロール出来ない。生まれて、恋をして、子供を生んで、死んで、またその子供は新たな命を生んで――そんな不可逆で壮絶な生命の業。当たり前に繰り返されるけど、見つめなおした時に湧き上がるのは、「では、何故自分は生きているのだろう？」という永遠に解けない問いだ。それがこの作品の、さらに言えば波多野裕文という人の創造の核なのだろう。それが３ピースのシンプルでいて練られた音楽となって私たちに届く。「さあ、元気に生きていこう！」なんて一言も言ってくれないけど、こんな誠実で生きる希望をくれる音楽は、他にないよ。（福島夏子）
