クリストファーの声は震えている

ガールズ『ブロークン・ドリームズ・クラブ』
2010年11月03日発売
ALBUM
ガールズ ブロークン・ドリームズ・クラブ
5曲目の“サブスタンス”で、ヴァースを歌い終えたクリストファーが震えた声で「ギター・ソロ、カモン」と叫ぶ――というか呟く。その瞬間に、もう、ガールズのすべてが詰まっているんじゃないかと思った。そこに、クリスの性格も、クリスとJRの関係性も、ガールズというバンドの存在証明も、全部ある。

ガールズにとって初めてのスタジオ・レコーディングがこのミニ・アルバムであり、当然音はクリアになっているし、表現のバリエーションも広がっている。それは当然、バンドの急激な進化を物語るものだ。だがその一方で、この作品を聴いて本当に驚くのは、ローファイな音像の霧を取っ払ったところで歌われるクリスの声の生々しさだ。彼の声にはいつも逡巡がある。彼にとって、そこで歌われる言葉は本来自分のなかだけにあったものだからだ。それを僕たちも戸惑いながら受け止める。そこに僕たちとガールズの関係が生まれる。その逡巡と戸惑いのコミュニケーションを、このミニ・アルバムはあからさまに記録している。彼らはスタジオを建てて次のアルバムを作るという。彼らの音楽はどこまでも彼らだけのものなのだ。(小川智宏)
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