“福笑い”は、理屈を超えて人間同士を繋ぐ「笑顔」の絶大な力を歌っている。絶対的なポジティブさを脈打たせつつも、奪い合いや疑い合いなど、醜い営みも笑顔同様に人間らしさであることにふと触れている公平さが、とても印象に残る。そして、鮮やかに迫るのは《きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて笑顔だと思う》というキラーフレーズ。これはラジオ番組にリスナーから寄せられた言葉だそうだが、無骨なまでに想いをダイレクトに突きつける高橋優の歌の魅力が一際煌めく一節だ。“現実という名の怪物と戦う者たち”は、自分同様に現実の壁にぶち当たっている人々との出会いが授けてくれる勇気についての歌。これも《いつまでも一緒にいられるわけじゃないことは》と、無視出来ないリアルがふと現れるのがとても高橋優らしい。現実逃避のために都合よく用意した耳当たりの良い言葉/現実のホロ苦さを力強く打ち砕く逞しさを持ったポジティブな言葉。どちらが真に人の心を打つか? それは議論の必要もあるまい。彼の歌に息づいているのは、言うまでもなく後者。聴いていると本当に元気になる。(田中大)