曽我部ソロの決定盤

曽我部恵一『PINK』
2011年04月21日発売
ALBUM
曽我部恵一 PINK
前作『けいちゃん』は、弾き語りによる個人表現の極みというべき作品だった。つぶやきに似た言葉の数々をひとつひとつ丁寧に拾い上げ、色彩感のあるメロディに乗せていく。そのプロセスの純度の高さにおいて、同作は比類のない高みに達していた。今作『PINK』もまた個人表現に徹しているという点では『けいちゃん』の延長上にある。ただし音楽的なアプローチ方法は異なる。『けいちゃん』が歌の骨格をそのまま見せるシンプルな作りだったのに対し、今作では曽我部の歌声を賑やかなサウンドが彩っているからだ。言い換えると、極私的な曽我部ワールドがその純度を保ったまま、バンド演奏による豊かな広がりを得ている。

これは木暮晋也らの腕利きプレイヤーに加え、ノラ・ジョーンズとの仕事で知られる大物エンジニア、グレッグ・カルビを起用したことも大きいだろう。《ぼくらはいつだって愛と苦しみでいっぱい》《なにもかもがうまくいかない日があるのさ》といった生々しいフレーズが、寸分の無駄もない艶やかなサウンドとともに天国的なトーンをまとう――今作のマジックはそこにある。(神谷弘一)
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