「新しげ」は要らない

ベン・ウェストビーチ『ゼア・イズ・モア・トゥ・ライフ・ザン・ディス』
2011年07月27日発売
ALBUM
07年のヒット作が『あなたにとって人生最高の1年へようこそ』で、本作は『人生にはこれ以上のことがあるんだよ』ときた。一通り聴いてみて、納得した。それにしても随分とUKダンス・ミュージック路線に振り切れたものだ。アシッド・ジャズから2ステップへと至る、これこそベン・ウェストビーチの血管を流れている根本の音なのだろうなという手応え。びっくりするような新しさやギミックは何もない。徹頭徹尾、彼自身の美意識だけが詰め込まれた「ベン・ウェストビーチのソウル・アルバム」になっている。
 
本作を聴くと、(特に前作での)彼は時代に色目を使わず、ただ時代に愛される人だったのだなということが良く分かる。単に自分が愛した音楽を信じてやっていただけだし、これからもきっとそうだ。たとえばジェイムス・ブレイク登場以降の新しいUKソウルが盛り上がりつつある中、近くシーンは玉石混交の様相を見せるだろう。そういう意図的に作られた「時代」と無関係の場所で、確かな意志を持つ人の音楽は生活にピッタリと寄り添ってくれる。ラスマス・フェイバーやMJコールらも参加。間違いなく好き。(小池宏和)
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