これが「バラード」というものです

忌野清志郎『sings soul ballads』
2011年11月23日発売
ALBUM
忌野清志郎 sings soul ballads
生前の清志郎が残していた直筆の曲目リストを再現する、作品タイトルもリストに記載されたままのソウル・バラード集である。彼がいつ頃この企画を考え、リストを書き上げていたのかという所が気になるが、“約束をのぞき”08年のベスト盤『入門編』と重複曲がないこと、また活動ユニットやレーベルを跨いだ選曲であることを考えても、『完全復活祭』後の再闘病中に練られていた可能性は高い。全力で回復に努めながら、「新作を生み出せないかも知れない」という未来とも真っすぐに向き合っていた清志郎の姿を思い浮かべると、胸が熱くなる。
 
シンガーがバラード・ベストを発表することは今や珍しくないが、希代のロック・シンガー=最強のソウル・マンであった彼の場合となるとわけが違う。商業的な便宜のために仕切られたジャンルの壁をすべてリセットするほどのパワーを誇る1枚だ。“雪どけ”、“花びら”、“仕草”と00年代の熟練の成果を絡めた連打に打ち震えた直後、“まわりはワナ”では悪戯に舌を突き出す清志郎が見える。リストにはない“500マイル”RCヴァージョンもボーナスで収録。(小池宏和)
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