忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

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 今年の『忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー』は、武道館から渋谷公会堂に舞台を移しての『全部 the 弾き語り!!!』という趣向だ。忘れられない歌がある。それを分かち合ってくれる人がいる。今回も極めて濃密で、名演・名シーンが連発の一夜だった。日本のロックの達人たち、それこそ弾き語りにしてもそれぞれに単独でとんでもないパフォーマンスを繰り広げてしまう人たちが、次々に登場して思い入れたっぷりに歌い、奏で、笑い合う。そういう特別な「場」を、今日も提供してくれる人なのだ。忌野清志郎は。自転車で颯爽と渋谷公会堂に乗りつける清志郎の姿をオープニング映像で追うと、ステージ下手側からはお馴染みヒトハタウサギが輝きながら舞台を見守り、上手側には清志郎の愛車・オレンジ号が配置されたロックン・ロール・ショーが、いよいよ幕を開ける。
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

 響き渡る清志郎の声がトータス松本の名を呼ぶと、「またトップ・バッターすよぉ〜」といった調子でトータスが応え、丁度いい案配にリラックスしたムードが場内を包み込む。アコギを奏で、歌うのはRCサクセション“あの娘のレター”だ。音源での、歌詞が掻き消されてしまった部分も器用に再現してオーディエンスの笑いを誘い、ウルフルズ版“ワンダフル・ワールド”の一節も挟み込むという、技ありの立ち上がりである。続いてブルース・ハープを吹き鳴らしながら臨むのは“よそ者”。「(RCの)『BLUE』がすごい好きなの。中1で『RHAPSODY』が出て、中2でギター買ってもらって、弾けるようになった頃に、出たのかなあ」と選曲の理由を語り、柔らかく跳ねるギターとともに歌われる“Oh! Baby”は《もうすぐ新しい歌ができ上がるはずさ/5月にはきっときみに贈るだろう Oh!Baby》というフレーズが奇麗に今の暦に嵌る。「野音で、2人で弾き語りやろうってなって、ソウルの大先輩やから、何かソウルの名曲をと思ったら、(清志郎が)いきなり“ガッツだぜ!!”やろうぜって(笑)。アコギにワウ繋いで、ウィーウーウィーウーって。やっぱすげえなって思いました」「この曲聴くと、清志郎さんのこと思い出すんですよ」と最後に披露されたのは、口笛を織り交ぜながらのオーティス・レディングの名曲“ドック・オブ・ザ・ベイ”であった。
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

 ヒトハタウサギを指差しながら、「ようこそー! イェーイェー!!」と現れた2番手は、早くも登場のこの人、仲井戸“CHABO”麗市である。ドライヴ感に満ちたギター・プレイがカッコいい“ボスしけてるぜ”は、ビートルズやローリング・ストーンズの名リフを織り込みながらの遊び心たっぷりなプレイ。気負いもなく軽やかにロックンロールの奥義にリーチし、「ある意味、RCサクセションが始まった街、渋谷へようこそ……」と切り出される、往時を振り返る内容の詩の朗読もまたとてつもなくロマンチックだ。「RCを発見してくれた人物」として奥田義行氏や、「竹中は武道館に前座で呼んでくれて」とJOHNNY,LOUIS&CHAR時代を振り返りつつCharにも感謝の言葉を投げ掛けると、“ぼくとあの娘”を経て、まさにチャボの向こうに清志郎の姿が透かし見えてしまうような感涙の“まぼろし”とRCナンバーを放ってゆく。恍惚とさせられているうちにパフォーマンスは早くもクライマックスを迎えてしまい、「グレートなシンガーがたくさん出るから、楽しんでください」と言葉を残してプレイされたのは、美しいギター・フレーズを爪弾きながらの“夜の散歩をしないかね”であった。
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

 さて、「俺から紹介させてくれー、ゴキゲンな二人組だ、真心ブラザーズ!」とチャボによる呼び込みを受けた、YO-KINGと桜井秀俊。さっそく2本のアコギのフレーズを交錯させつつ、届けられるのは70年代も前半のRCナンバー“あの歌が思い出せない”である。今回の出演者の中にあっては、デビュー25周年の真心でさえ最も若いグループに当たるわけだが、そんな真心がここまでで一番歴史の長い楽曲を披露してしまうのが面白い。「こんなステージに立てて嬉しいです。幸せです(YO-KING)」「いやもう、楽屋がヤバいです。気分は中2です(桜井)」と若手っぽいスタンスをアピールしつつも、流麗なフォーク・アレンジの“お墓”は桜井の鮮やかなギター・プレイも映える名演であった。「やっちゃうかあ、この曲を」「やっちゃうかあ……やめとく?」といったふうに笑いも振り撒きながら波に乗る“わかってもらえるさ”、そしてサイケ感を呼び込むハーモニーに彩られた“よごれた顔でこんにちは”と、この辺りも70年代RCナンバーを立て続けに届ける。「ここでゲストとセッションを。今日はじめて会う人ですけど」と冗談を言いながら奥田民生を、更には「ノーギャラのシークレットゲスト」として浜崎貴司をも招き入れた豪華編成でダメ押しの“デイ・ドリーム・ビリーバー”へ。浜崎は「シークレット過ぎて入れて貰えなかった」「Charさんにタメ口きいちゃった」と笑いめかしつつ、楽曲終盤のハーモニーの広がりで見事な活躍を見せてくれた。
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

 真心へのゲストとして登場したときは立ち位置に戸惑っていたものの、あらためてステージ中央に赴いて椅子に腰掛け、堂々パフォーマンスへと向かう奥田民生である。まずは、RCのデビュー・アルバム『初期のRCサクセション』から、辛辣にしてどこかユーモラスなヴォーカル・フレーズが飛ぶ“シュー”だ。「そうだよね……どう考えてもチャボさんと順番が逆ですよね」「バッテリーを消耗しますね。もう、やり切った感が(笑)。キーが高いんで、清志郎さんが軽やかに歌ってても、僕が歌うとメタルみたいになるんですよ」。いやいや、本当に凄いのはここからだった。その爆発力をもって完璧な民生節と化す、圧巻“スローバラード”である。2011年の『忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー』でもバンド・ヴァージョンのパフォーマンスにぶっ飛ばされたけれど、弾き語りでも同じくらい、もしかするとそれ以上かという強烈な一幕だ。誰しもが認めるハイライトだったろう。
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

 そこに「いい声してんねえ」と入ってくるのが、オシャレな飾り付きハットを被ったCharである。「今からやる曲はですね、30年前、清志郎と共作した曲です。“かくれんぼ”という曲。清志郎は鬼のまま隠れちゃいましたが、奥田民生とやりたいと思います。Are you ready?(Char)」「Yes...(民生)」とデュエットに向かうのは、当時のアニメ作品『県立地球防衛軍』に提供したナンバーだ。「俺は昔、フォークの人たちのバック・ギタリストをやってまして。RCの追っかけだったの。RCが武道館でライヴやるって言って(1980年のイヴェント出演時)、清志郎が最初に何を言うか楽しみで、もちろん、ベイビー、だったんだけど(笑)、そのときに、〈こんなに狭いライヴハウスでやるのは初めてだぜ〉って言ったの」。ところどころ謙遜なんだか冗談なんだか分からない部分もあるが、さすがChar、自身が伝説なだけあって日本ロック史の生き証人たる話題を振り撒いてくれる。続いては、こちらも『県立地球防衛軍』への提供曲として共作された“S.F.”だ。トータスがゲストとしてブルース・ハープを加え、オーディエンスを巻き込む掛け合いヴォーカルが賑々しく転がってゆく。「声が小さいよな。腹から出してない気がする」とオーディエンスを煽り立てるCharのおかげで、熱いムードのまま出演者全員が集合しての“つ・き・あ・い・た・い”へと繋いで行った。横一線に並んだ浜崎、トータス、チャボ、民生、Char、YO-KING、桜井という壮観なステージ上。めくるめくヴォーカル・リレーが届けられ、チャボと寄り添いつつ最後の最後にCharのエレクトリック・ギターが思うさま火を吹く。桜井も、アコギを寝かせて魅惑のスライド奏法を披露していった。そして手を繋いでお辞儀をした彼らは、思い思いに握手を交わし、チャボは熱演をねぎらうように、民生の頭をポンポンと叩くのであった。なんて心温まる光景だろう。
忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー@渋谷公会堂

 出演者を見送った後のステージは、清志郎のライヴ映像で締め括られる。1989年RCのクリスマス・ライヴからは“MIDNIGHT BLUE”が、そして2004年の2本のライヴからは“デイ・ドリーム・ビリーバー”と“三番目に大事なもの”が。2008年の『完全復活祭』からは“雨あがりの夜空に”と“毎日がブランニューデイ”が届けられ、今年のステージは幕を閉じた。『忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー』は、足を運ぶたびに、持ち帰る思いが違っている。忌野清志郎というロック・スターも、今を生きるベテランのスターたちも、最初からスターだったわけではなく、みんな初めはただのロック小僧だった。そんな、当たり前だが忘れがちな事実。筆者がロックを意識し始めた頃、すでに清志郎は大変なスターだったが、筆者が生まれた頃には、まだRCはフォークからエレクトリックへと向かうスタイル変遷の過渡期であり、希代のロック・バンドとして時代に旋風を巻き起こすその前夜であった。清志郎の残した楽曲群によって、それらを歌うアーティストたちによって、以前よりも彼らが身近に感じられた。そんな気持ちで帰路につく、あれから5年目の、5月の夜であった。(小池宏和)

01 あの娘のレター~ワンダフル・ワールド/トータス松本
02 よそ者/トータス松本
03 Oh! Baby/トータス松本
04 (Sittin’ on) The Dock of the Bay/トータス松本
05 ボスしけてるぜ/仲井戸“CHABO”麗市
06 ぼくとあの娘/仲井戸“CHABO”麗市
07 まぼろし/仲井戸“CHABO”麗市
08 夜の散歩をしないかね/仲井戸“CHABO”麗市
09 あの歌が思い出せない/真心ブラザーズ
10 お墓/真心ブラザーズ
11 わかってもらえるさ/真心ブラザーズ
12 よごれた顔でこんにちは/真心ブラザーズ
13 デイ・ドリーム・ビリーバー/真心ブラザーズ×奥田民生(w/シークレットゲスト・浜崎貴司)
14 シュー/奥田民生
15 スローバラード/奥田民生
16 かくれんぼ/奥田民生×Char
17 S.F./奥田民生×Char w/トータス松本
18 つ・き・あ・い・た・い/(出演者全員)
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