いわゆるカムバック作とはいえ、「鳴り物入り」な華やぎは薄い。ゲストにノラ・ジョーンズ、ベンモント・テンチ、(細君)マンディ・ムーア他が参加、ストリングスも美しく鳴るが、あくまで彼の歌と声が主役の抑制された作風は『ハートブレイカー』、『29』の流れ。平均3~4分台と吟味された曲の尺、クリーンなアレンジ、グリン・ジョンズの熟練した卓さばきは、一味違う本作のトータル性と成熟に貢献している。M2、M5といったロック寄りなトラックすら、エネルギーを的確にコントロールしている。何より新鮮なのは、本作の一聴シンプルで聴き手を構えさせない歌が、70年代のジェイムス・テイラー、あるいはジャクソン・ブラウン作品を思わせる、苦悩の果ての悟りともいうべき普遍とエレガンスを宿している点。アメリカのハートを引き継ぐ人である。(坂本麻里子)
火と雨を抜けて
ライアン・アダムス『アッシズ&ファイア』
2011年11月23日発売
2011年11月23日発売
ALBUM
いわゆるカムバック作とはいえ、「鳴り物入り」な華やぎは薄い。ゲストにノラ・ジョーンズ、ベンモント・テンチ、(細君)マンディ・ムーア他が参加、ストリングスも美しく鳴るが、あくまで彼の歌と声が主役の抑制された作風は『ハートブレイカー』、『29』の流れ。平均3~4分台と吟味された曲の尺、クリーンなアレンジ、グリン・ジョンズの熟練した卓さばきは、一味違う本作のトータル性と成熟に貢献している。M2、M5といったロック寄りなトラックすら、エネルギーを的確にコントロールしている。何より新鮮なのは、本作の一聴シンプルで聴き手を構えさせない歌が、70年代のジェイムス・テイラー、あるいはジャクソン・ブラウン作品を思わせる、苦悩の果ての悟りともいうべき普遍とエレガンスを宿している点。アメリカのハートを引き継ぐ人である。(坂本麻里子)