最高のさよなら

R.E.M.『グレイテスト・ヒッツ~パート・ライズ、パート・ハート、パート・トゥルース、パート・ガービッジ、1982-2011』
2011年12月21日発売
ALBUM
このベスト・アルバムのタイトルは、私が最後にマイク・ミルズにインタヴューをした時に「ピーター・バックがR.E.M.を表して言った言葉」と言っていた言葉そのままだ。きっとその時すでに解散が決まっていて、今作の話もされていたのかもしれない。実は私もそのインタヴューの際バンドは解散すると思ったし、それ以前にラスト・アルバムの歌詞を読んでそう思っていた。今作を聴いて再び感涙。その解散の理由が、収録された新曲3曲の中でしっかりと語られているからである。確かにさよならツアーもなくファンはお別れを言う機会はなかったかもしれない。でもR.E.M.は、最後の最後まで音楽にそしてそれを聴いてくれる人に音楽を通じて誠実に向き合ったバンドなのである。これ以上のことを望む権利などあるのだろうか?
 
ここに収録されたライナーノーツがまた最高で、バンド・メンバーの全曲解説が付いているのだけど、いきなりそれがビル・ベリーで始まるのである。これは間違いなく果たされなかった再結成の瞬間である。しかも何が素晴らしいって、バンドが変なしみじみモードでもなくて、曲を真っ直ぐと淡々と語っていることである。そしてこれを読みながら曲を聴いていると、自分の人生とR.E.M.が「寄り添って」歩むのだ。そして新曲に辿り着くわけだけど、つまり今作は、お別れの場所まで彼らが私達を連れて行ってくれる作品でもあるのだ。ファンであればもちろん解散して欲しくないに決まっている。しかし、その選択肢がもう100%ないなら、こんなに誠実に私達にお別れを言ってくれたバンドは他に絶対にいない。(中村明美)