さまざまなアレンジャーとタッグを組んで、新たな音、新たな表現を追求した5thアルバム『JAPANESE POP』(2010年)以降も、『大人のまじめなカバーシリーズ』リリースがあり、ドラマやCMに曲を書きおろしたりと、つねにどこかで彼女の曲を耳にしていた気がする。でも実際は、この一年ほどの間に子を授かり、母となり、女性として大きな転機も迎えていた安藤裕子。このアルバムは、出産という大仕事を間にはさみながら、制作された。試行錯誤や挑戦がありながらも、柔らかな印象のあった前作に対して、力強く立っている、強固な存在感や重みが伝わってくる内容になっている。ドラマ主題歌となった“輝かしき日々”のような、全方位の愛情で思いのままに突き進む曲から、恐れをひとつひとつ取り除いていくように包み込む曲、感情を裸にしながら己と対峙していく曲など、どの曲もドクドクと激しく脈打ち、高い温度がある。どんなに激しくも、険しさはない。閉じた濃密な世界にひたひたと浸かる快楽も、ない。とても愛おしそうに悲しみをぬぐってくれる感覚に、高揚感が湧きあがってくる。(吉羽さおり)