25年目の第一歩は宇宙に向けて

BUCK-TICK『エリーゼのために』
2012年05月23日発売
ALBUM
徳間ジャパンで設立した新レーベル「Lingua Sounda」からの第一弾シングル。このレーベル名は今井寿の命名で、例えば日本人と中国人が英語で会話する場合の英語のような母国語外の共通語を意味する「Lingua franca」をもじって付けたというが、発想の起点はEP‐4の『リ・ン・ガ・フ・ラ・ン・カ』だろう。
 
今井が作詞のリード・トラック“エリーゼのために”はベートーヴェンがオリジナルだが、RCサクセションの佳曲というより同題の忌野清志郎詩集がヒント(というか引用)だとか。エフェクトの効いたギターと櫻井敦司の強いヴォーカルが、メリハリのある展開でエロティックな詞を突きつけてくる。「君が本当に欲しいのはそれじゃない」という部分に想像逞しくしたくなるが、対する“夢見る宇宙”は櫻井が作詞。スケール感のある歌詞と演奏も対称的だが、“エリーゼ~”へのアンサーソングでもあるそうで、敢えて言うなら肉体と精神か。二人のキャラが際立つ2曲だ。もう1曲は『COSMOS』(96)収録曲のセルフ・カヴァー。パンキッシュなこちらもいいが、エレクトロニカな原曲も聴くべし。(今井智子)