たとえばM1“ラヴ・トゥ・ビー・ロスト”で展開する身を焦がすような純白の轟音世界にしても、清冽な電子音が洪水のように五感を研磨するM11“スクラッチズ”にしても、紛れもなく肉体性を伴うバンド・サウンドでありながら、「およそ人間が到達し得る限界を越えた神秘と恍惚の風景」というテーマから「自分たちがやるべきこと」を逆算したとしか思えない、恐るべき純度と輝度のアンサンブル。「エレクトロな要素を多用」を通り越して、生楽器と電子楽器と歌がすべてフラットな価値観の上に構築されたサウンドスケープ……晴れて本国UKデビュー盤となった前作3rdから約2年、初のUSレコーディングで完成させた新作でカイトが提示しているのは、耽美でもなければ白昼夢でもない。憂いも苦悩も僕らの生きる糧であることを厳然と指し示すために磨き上げた究極のアートフォームであり、人間の表現欲求やエゴを越えた次元から降り注ぐ福音としての音楽の在り方そのものだ。シューゲイザーとかポスト・シガー・ロスとか貼りたい放題に貼られまくったレッテルを無効化した先に、彼らは別の頂を作り上げようとしている。(高橋智樹)