ソロをへてバンドを組織する中でソングライティングを押し広げストーリーテリングを掘り下げてきた過去のディスコグラフィーと、今作は位相が異なる。時に音楽以外からも着想を求めコンセプチュアルな設定を用意したデイヴ・ロングストレスの作法は、ここで大きな転換を見せている。前作『ビッテ・オルカ』と比較して抑制の効いたバンド・アンサンブル。パーカッシヴからメロディアスへ。リード曲の③を始めデイヴの独唱が映える削ぎ落とされたコンポーズはまさにソングオリエンテッドと呼ぶにふさわしい。そして全体で一貫した世界観を描くのではなく曲ごとに独立したストーリーが並ぶ、古きポピュラー音楽のアルバムを意識させた体裁。これを所謂SSW的な原点回帰と呼ぶかはさておき、近作とは対照的なアプローチが示されているのは間違いない。さらに紡がれる言葉の数々からは――他愛のないラヴソングや寓話的な小曲に交って、現代の語り部としての矜持さえ伝わってくる。つまり追求されているのはメロディとリリックのハーモニーという至極普遍的な境地であり、転じてリリックと曲構造の関係にまで踏み込んだ試みも今作ではなされている。たとえば異種交配というテーマをヴァースとコーラスの対比で描いた①。あるいはインスト・ブリッジとギター・ソロの連携が生み出すフィーリングに「You」への想いが託された⑥。一方、アンバーのソロ曲や華麗なコーラス・ワークは健在であり、従来の美点は損なわれることなく息づいている。いわばデイヴのSSW的な資質の深化がバンドの力学に進化をもたらした、キャリアの画期点を刻む作品だろう。(天井潤之介)