ちょっと幸せ、でも悲しい

アブセンティー『ヴィクトリー・ショーツ』
2008年10月15日発売
アブセンティー ヴィクトリー・ショーツ - ヴィクトリー・ショーツヴィクトリー・ショーツ
デビュー作『Schmotime』が本国イギリスのみならずアメリカでも高く評価された(アークティック・モンキーズやミステリー・ジェッツを手がけたジェームズ・フォードがプロデュースを手がけたことも話題に)、バリトン・ボイスのダン率いるロンドンの5人組アブセンティー。明るいサウンドにダークな歌詞のコントラストがすばらしかった1stに比べ、8月にリリースされたこの2ndは、なかなか出せない物語/ユーモア性が貫かれた秀作だ。最近のバンド(特に英)としては貴重な存在といえる。ジョニー・キャッシュばりの世界観もペイヴメントのような、ねじれた愛すべき世界観もある、というとすごすぎるかもしれないけれど。バニー・マニロウ、カーペンターズとロマコメに囲まれ、冴えない学校生活を送ったキッズがバンドを始めて大人になって、でも大人になればなったで、ロマンがありその崩壊がある、ハッピーエンドは簡単には訪れない――という悲喜こもごもを、けっしてチープすぎず、かといって自伝的すぎず、普遍性をもって描き出すことに成功している。ふとホールド・ステディの1stを引っ張り出したくなる1枚。(羽鳥麻美)
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