どれもすばらしいが、特筆すべきは5つの新録曲だ。ソロでは音楽的冒険を大いに行ってきた桑田だが、同時に私小説的と呼べるほどに内省的でリリカルな楽曲も多く残している。新録の“幸せのラストダンス”はそんな名曲の一つで、涙なしで聴くことは難しい。60年代のアメリカンポップスを思わせるメロディに乗るのは、美しい恋愛の季節を終えて結婚へと向かおうとする主人公の独白だ。そんなストーリーが、とうにオヤジになり果てた私のような聴き手にも響くのは、甘いコーラスワークの背後に、先行きの見えない社会、そこで年齢を重ねて生きていくこと……といったリアルなテーマが散りばめられているから。ポップソングの中に世界のざわめきを映し出す――その精度において、やはり桑田を超えるソングライターはいない。 (神谷弘一)
世界のざわめきが聞こえる
桑田佳祐『I LOVE YOU -now & forever-』
2012年07月18日発売
ALBUM
どれもすばらしいが、特筆すべきは5つの新録曲だ。ソロでは音楽的冒険を大いに行ってきた桑田だが、同時に私小説的と呼べるほどに内省的でリリカルな楽曲も多く残している。新録の“幸せのラストダンス”はそんな名曲の一つで、涙なしで聴くことは難しい。60年代のアメリカンポップスを思わせるメロディに乗るのは、美しい恋愛の季節を終えて結婚へと向かおうとする主人公の独白だ。そんなストーリーが、とうにオヤジになり果てた私のような聴き手にも響くのは、甘いコーラスワークの背後に、先行きの見えない社会、そこで年齢を重ねて生きていくこと……といったリアルなテーマが散りばめられているから。ポップソングの中に世界のざわめきを映し出す――その精度において、やはり桑田を超えるソングライターはいない。 (神谷弘一)