大人になってもお茶目さん

アリエル・ピンクス・ホーンテッド・ グラフィティ『マチュア・シームス』
2012年08月01日発売
ALBUM
アリエル・ピンクス・ホーンテッド・ グラフィティ マチュア・シームス
ブレイク作となった前作『ビフォー・トゥデイ』は、自分にとっての彼の魅力であるルーズさとランダムさとが一元的な音作りとスタイルの枠組みに塗り込められて息苦しく、以前の作品(『Worn Copy』等)ほどのめりこめなかった。宅録時代のローファイ&ファジィなサウンドから卒業することでカルト/アングラから脱却……という進化論は理解できるが、結果として持ち味が薄くなってしまうのでは?と疑問が残った。

しかし、本作はそうした危惧(余計なお世話ともいう)を一掃する痛快な内容になっている。録音のクリアさは前作を継承しているものの、全体的にスリム・ダウンした音と自由度の高いバッキングは彼のアクの強さとやんちゃな気まぐれとが腕を伸ばせる広い空間を提供。珍妙なビート・ポップ(①⑧など歌詞も抜群)からミューザック風、スペイシーな浮遊トラックまで咀嚼しつつ、破綻しないバランスもジャストだと思う。④⑤⑥に顕著なザ・バーズ味を筆頭に本作のキーは60年代末LAロックらしいが、ニック・ロウばりにキュートな③など、クラシックなポップ・メロの書き手としての天分も遺憾なく発揮されていて◎。(坂本麻里子)
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