ねごとの音楽を聴いてワクワクするのは、こちらの解釈をいつも鮮やかに裏切ってくれるからだ。サウンドの質感やリズム展開に注目すると、ニューウェイヴからオルタナへと至る音楽史との関連が気になるが、その音楽は特定のスタイルに固執せず、次々と変化していく。イメージが乱れ飛ぶ歌詞は、一見すると相対性理論のような知的遊戯性を思わせるが、時折ズバッと生々しいフレーズが飛び出すなど、これまた説明が容易ではない。
　
言い換えると、型にハマることを拒みながら猛スピードで進化しているのが、今のねごとなのだろう。4ヶ月連続リリースの第2弾にあたる本シングルは、前作以上にラディカルさが際立った一枚。小気味よく刻まれるリズムが印象的な表題曲では、ミニマルな音とキュートな歌声、そして心の叫びとも受け取れるフレーズがぶつかり合い、カオス的な作品空間を生み出している。一方、2曲目は「海」や「魚」をモチーフとした幻想的な歌詞を美しいメロディで歌った、正調のギターロックナンバー。どこに向かうかわからないが、行方は知りたい――そんなスリリングさに満ちた一枚。（神谷弘一）