次なるビジョンの素描

ブロック・パーティー『インティマシー』
2008年10月29日発売
ブロック・パーティー インティマシー - インティマシーインティマシー
前作での「覚醒」といってもいい進化・深化のインパクトがあまりに強かったためか、本作に対する第一印象は正直、あまりポジティブなものではなかった。ケリーが思い描いていたさまざまなアイディアを片っ端から試したのだろう。“マーキュリー”のようなダンス・チューン、“サインズ”のようなエレクトロニカ的アプローチ、デジタル・ロック的な音響の上にブロック・パーティー節のメロディが乗る“ワン・マンス・オフ”、レディオヘッド“15ステップ”みたいなブレイク・ビーツから始まる“ゼフィルス”。定番といえるものから新機軸まで、あらゆるトライアルがなされていて興味深い一方で、どうしても中途半端な印象を拭えなかったのである。だが、逆にいえばそれこそが本作でブロック・パーティーが目指したことだったのだろう。ケリーは前作でテーマ性を明確にしたことがかえって彼の意図とは違う解釈を呼び、結果アルバムに対する見方を限定させてしまった、と反省しているらしい。そこから脱却するために、1stのプロデューサー=ポール・エプワースと2ndのプロデューサー=ジャックナイフ・リー両者を召還し、新たなバランスを模索しようとした。つまり本作で彼らは、意図的に不安定な作品を作り上げたということなのだ。だから諸手を挙げて「傑作!」と賞賛するわけにはいかない。が、必要なプロセスだったことは推察できる。作ってすぐに出したかったというのも、すぐ「次」にいきたいということなのだろう。そう、重要なのはここからどこにいくかだ。(小川智宏)
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