本音を言うのは誰だって怖い。「空気を読む」という言葉が子供にまで広がっているという今、同調圧力に屈してあらゆる思いが押し込められ、いろんなものが曇っているように思える。何となくわかっていながら見過ごしているこの風潮に高橋優は疑問を呈し、本音をむき出しにして、ひとり抗おうとしている。その闘志の塊がこの『BREAK MY SILENCE』だ。《同じような窮屈を君も感じてる?/不幸せばっか拾い集めなきゃいけないような淋しさを》(“陽はまた昇る”)。飾りをそぎ落としたサウンドに乗せられる、やるせない現実、不器用にしか生きられない者たちの嘆き。それは心に重く響くが、高橋の歌が素晴らしいのは、「それでも人を信じているし、愛している」という思いが希望になっているからだ。地元秋田の言葉で歌われる《手っことりあえば道が拓ぐ/僕らの未来に光射す》(“泣く子はいねが”)という一節は、泣きはらす夜だって思わず笑みがこぼれる温かさに溢れている。願うのは、沈黙を破り本音を交わした先にある人々の笑顔。高橋が身を削って放つ決意のメッセージを受け取ってほしい。(小新井知子)