世界に叩きつけられたハードコア

ニルヴァーナ『イン・ユーテロ 』
ニルヴァーナ イン・ユーテロ
本作のオリジナル・リリース時に起きたゴタゴタを知る者なら、揉め事の当事者であるスティーヴ・アルビニに今回ミックスをやり直させた事実がいかに大きな意味を持っているかはわかるだろう。パール・ジャムもデビュー作をブレンダン・オブライエンに丸ごとリミックスさせていたが、こちらは別の人間ではなくオリジナルも手がけた当人が納得のうえで再び作業に取り組んだのだ。新しいサウンド・プロダクションでは分離/バランスが整えられ、ダブル・ヴォーカルの重ね方などもより印象的に響く。ただ、アナログの鬼職人アルビニだけに、ダイナミクスと引き換えに音圧を稼ぐようなまねはしていない。もし、これから『イン・ユーテロ』を聴くという若いリスナーがいたら、新ヴァージョンを勧めると思う。しかし、それでもなお当時のニルヴァーナをとりまいていた空気を脳髄に刻まれたように記憶する者としては、やはり本作の音はオリジナル版しかありえないともあらためて感じる。このアルバムが当初のままの形で世に出たことは、後年のUSインディー・シーンへ密かに大きな影響を与えたはずだ。デモ音源に関しては、ほとんど歌が入っていないのが残念だが、いずれもバレット・ジョーンズやジャック・エンディーノによって録音されたもので、音質的なクオリティは充分な水準。また、アートワークについても、美術家としてのカート・コバーンのセンスが最も反映された作品であるだけに、それらを拡大した形で手にとれるのは嬉しい限りだ。そして、あの『ライヴ&ラウド』がついに完全版の形で初商品化!大音量で聴こう(見よう)。(鈴木喜之)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on