AA= 史上最強のツアーDVDがついにリリース! コラボゲストも総登場なロックマスト作品を徹底レビュー

AA=

文=小野島大 写真=浜野カズシ

<AA=@リキッド。あまりの音のデカさにぶっ飛び、あまりの音の良さにぶっ飛び、あまりの演奏のカッコよさにぶっ飛んだ。久々に高校生マインド刺激されまくり。ロックはAA=だけで充分だろ、ほかに何が必要なんだと思いましたw
いやほんと、最高だった。>

以上は2016年6月11日、AA=の最新アルバム『#5』のツアー「AA= TOUR #5」の最終公演となった恵比寿リキッドルームを観たあとの僕のツイートである。とても音楽評論家の看板を下げているとは思えないオツムの弱い発言だが、観終わった直後の興奮さめやらぬ状態で書いたものだから、偽りなしの本音でもある。

そのリキッドルームでのライブを完全収録したDVD『TOUR #5』が出る。自宅のテレビモニターで再生される映像を見て、半年前の興奮が蘇ってきた。というかはっきり言って自宅の書斎で爆アガリである。これは凄いライブDVDだ。もちろんライブの現場にいるからこそ感じる空気や熱気、観客の人いきれやカラダのぶつかり合う感触や全身がブルブル震えるような重低音は、どんなに映像や録音の技術が発達しても、なかなか再現できるものではないだろう。だがこのDVDは当日の雰囲気をかなり的確に捉えていると感じた。冒頭の光と影を際立たせる照明を効果的に生かした演出で期待を煽られ、通常よりも大きなバランスで収録された観客のノイズが興奮を誘い、さらに客席に配置された手持ちカメラが観客の激しい動きに応じて大きくブレまくり、まるでフロアで観客とともにAA=のライブを観ているような臨場感を与える。テンポのいい、早いカット割りがライブのスピード感を十分に伝えてくる。さらに決定的なのは上田剛士自らミックスを手がけた音響面のぬかりのなさ。バランスが良く、クリアで分離がいいのに音が固まりになって飛んでくるような音圧感も十分。これは薄型テレビのしょぼいスピーカーではなく、ぜひお手持ちのステレオセットに繋いで聴いてほしい。その迫力に驚くはず。

そしてDVDでは、実際のライブ会場にいてはなかなかわからない、アーティストの細かい仕草や表情、汗が飛び散ってくるような動きがよくわかる。さらに会場では聴き取りにくい歌詞や上田のMCが聴き取りやすくなっているのも大きなポイントだ。そうすることで、AA=の音楽が、ただのフラストレーションの発散ではなく、しっかりとした社会的なメッセージの上に成り立っているのがよくわかる。実はAA=を、他の凡百のラウドロック勢と圧倒的に峻別しているポイントがそこなのだ。

All Animals Are Equal、つまりすべての生きものはすべて平等であると宣する上田の主張は、もちろん単なる動物愛護ではない。あらゆる差別や偏見、搾取や暴力や戦争、つまり生きものとして生きる権利を疎外し抑圧するものすべてと戦うべきだとAA=は訴えている。彼の表現の根底にはそうしたメッセージ、というよりは信念が流れている。そうした強い「動機」がAA=の音楽をここまで強いものにしているのが、DVDを観ていると非常によくわかる。

CrossfaithのKoie、coldrainのMasatoとの共演曲“FREE THE MONSTER”のステージが壊れそうな喧噪な迫力や、Dragon Ash・Kjとの“M SPECIES”の貫禄すら感じさせる硬派なメッセージなど、豪華ゲストとの印象的なコラボも、その場の熱い空気がビンビン伝わってくる。とりわけJ.M.(0.8秒と衝撃。)との“→MIRAI→ (ポストミライ) ”は、未来は自分たちが作っていくものだとするポジティブなメッセージが感動的ですらある。この日はPay money To my PainのZAXがドラマーを務めているが、上田の操るノイジーなシンセとZAXのドラムが真っ向から対峙する“BATTLEFIELD TvsZ”も凄い迫力だ。

さらにこのDVDの初回限定盤には、2015年6月に東京都世田谷区内の3ヶ所にて開催されたツアー「SETAGAYA TOUR 2015 -COMPRESSOR!!!!!-」と、同年11月に東名阪で開催された秋ツアー「AA= TOUR THE NEXT」の模様も抜粋で収められている。つまり昨年から今年にかけての、「AA= TOUR #5」に至るまでの過程を体験できるわけだ。狭いライブハウスならではの熱量が伝わってくる。

ポスト・インダストリアルとハードコアを融合させたようなAA=の音楽はマシーンミュージックでもあるが、同時に強靭な肉体性を持った強力なバンドサウンドでもある。いわば演奏者の身体感覚を最新のテクノロジーで拡張したような表現である。テクノロジーが進化すれば、アーティストも進化する。僕はここに音楽の「ポスト・ミライ」を感じるのだ。そんなAA=現在形を刻みつけたDVD『TOUR #5』。結局のところ僕の感想は冒頭のツイートに尽きる。ロックはこのDVD1枚あれば、ほかに何もいらない。

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