小学校、幼稚園の頃から浮いてたかもなあ(笑)。友達がいないわけじゃないんですけど、周りとはちょっと違ったかもしれない
――でもそれは音を聴いた印象とも合致するよね。
「ああー、確かにそうかもしれない」
――すごく感覚によって動いているバンドだなあという感じもするし、逆に言うと、さっきも言ったけど、あまり周りを見渡してもシンパシーを感じられるバンドがいないなかで活動してきて、その感覚を信じるしかないんだと思うし。だから、『new place』っていうミニアルバムの歌詞を読んでても、常に満たされない感じ、居場所がない感じが出てる気がするんだけど、日常を生きててそういう感覚を覚えることって多いですか?
「多いですね(笑)。確かにそうかもしれないな」
――それは地元にいた時からそう?
「そうですね。小学校、幼稚園の頃から浮いてたかもなあ(笑)。友達がいないわけじゃないんですけど、周りとはちょっと違ったかもしれないですね」
――そのぽっかり空いてるものっていうのを何かで埋めようとして、たとえば音楽に行ったりとかしたんだと思うんだけども、音楽以外の表現っていうのに興味なかったんですか? たとえば絵を描くとか。
「いや、ありますよ。僕、高校受験の時に美術の専門学校も受けてて、そこも受かったんですけど、すごい変な人たちしかいなくて、受けてる人が。中学校上がりなのに周りは金髪で、厳つい人が落とした箸を拾ってくれたりとか(笑)。『なんだここ!』って思って普通の高校に行っちゃったんですけど(笑)。美術も好きで絵とかもやりたいし、個人的には全部やりたいんですけど、たぶん全部を一流にするのってすごい大変なことだと思うんで、僕は仲間を作って一緒にやってもらってるって感じですかね。イメージを共有して一緒に作ってもらって」
――なるほどね。
「カルチャーの塊みたいな――言い方、ちょっとダサいかもしれないすけど、みんなに『雨のパレード』っていうカルチャーとして認識されたらいいなっていうか。『え、バンドじゃないの?』『いや、バンドでしょ』みたいな会話があったら夢あるなと思ってこういう形に僕はしました。たぶん音楽ってすごく柔軟なカルチャーだと思うんです。だから『一緒にできないかな』と思ってこのバンドを考えたんで。『ブランド』って言ったら安いかもしれないですけど、『雨のパレードのなんだ。欲しい!』みたいに思ってくれたりとかするのが夢、目標です」
ちょっと自分のこと曝して、近くに感じてもらえたらなっていう思いもこもってます
――雨のパレードの基本的姿勢って、今の話みたいなこともそうだし、今ある価値観に対するアンチテーゼなんだろうと思うんですね。で、その先にあるものって革命じゃないですか。「世界をひっくり返したい」っていう野望があるのかなあと。
「そうですね、ぶっ壊したいです(笑)。それはずっと思ってます。たぶんいろいろ不満を感じてるんでしょうね。あんまりそこまで意識したことないすけど、『これが不満だー!』とか――ありますね(笑)」
――ただ、それをすごくポップな形でやりたいって感じだよね。
「そうですね。聴いてもらわなきゃ意味ないんで、届ける人数は大規模でないとって思ってるんで」
――そういう意味じゃ、今回のミニアルバムは『sense』から比べても格段にブラッシュアップされていると思うんだけれども。
「今回パッドを新しく導入したりとか、楽曲的にもやりたいことに少し近付けたんじゃないかなあと思ってて。個人的には次回作でももっとそっちに寄せていけたらなと思っています。今、サンプリングパッドとかも買っていろいろ試してるんで」
――今回入ってる8曲っていうのは、わりと最近作った曲?
「“encore”以外は『アルバムを作ろう』ってなって作った曲です」
――ここに入ってる曲のリアルタイムな感じって自分でも感じますか?
「心境の変化が表れてて、今まで客観視してシニカルに書いてるのが多かったんですけど、ちょっと自分のことも曝け出してみたりっていう気持ちも歌詞に出てる気がします。“new place”の歌詞とかはほんとはあんまり書きたくなくて、こういうことは。サビの内容はとくになんですけど、過去にいろいろあったこととかはあんまり書きたくなかったんですけど、やってみると意外とよかったですね。見直すのはちょっと怖いですけど(笑)。でも、知らない人とかでも一緒に生い立ちの話とかしたら距離近付けると僕は思ってて、それでちょっと自分のこと曝して、近くに感じてもらえたらなっていう思いもこもってますね」
――雨のパレードって世界観も含めてきっちり作り込んでいるから、ともすればすごく無機的というか、コンセプトアートみたいに捉えられがちなような気もするんだけど、実はもっと人間臭い集団であると。
「そう、実は」
――ライヴだとそういう感じじゃないもんね、そもそも。
「そうですね、ワッ!て感じなんで(笑)。ライヴでお客さんと直につながることってすごい大事だと思うんですよ。昔すげーきれいな景色見て、そん時やっぱ目だけじゃなくて、耳とか鼻とか口とか触感とかも全部重なって脳味噌ぶわってなった時があったんすけど、その感じがライヴで出せたらなと思ってて。それってたぶん生で見ないとダメなことで、その感じを追求していきたいですね」
――どんな景色だったの?
「鹿児島の浜だったんすけど、ずっと海で、ずーっと砂浜で、で、ちょっと小高い丘あって、紫の小花とか咲いてて、朝日が昇るマジックアワーの時間帯で、全部がピンク色になってて。その時感じたことない気持ちになって、自然と大声出して走っちゃうみたいな。あの感覚ってたぶんその時の匂いもあったし、波の音もあっただろうし、前の日に食ったやつの味とかもあっただろうし、全部重なって感覚が広がったっていうイメージなんですけど、その気持ちになって欲しいなって感じですよね。ライヴは」
――世界と直接つながるみたいな感覚じゃないですけど、開けていくっていうか、自分の感覚が。ライヴを見る人にその感覚を感じさせることができたらすごいよね。
「すごいっすよね。でもそのゴールって全然明確じゃないし、自分たちにはわからないだろうけど、だからたぶん死ぬまでやるしかないんだろうけど、味わわせたいですよね。あの感覚を」
――一種の神秘的体験でしょ。
「そうですね。それをライヴでっていうのがやりたいことだったりする」
――俺、“YES”が好きなんですけど、ここに描かれてる歌詞のポジティヴな感覚――。
「ポジティヴに書きました(笑)! オケに引っ張られた感じですかね。『これはラブ&ピース書くしかないな』っていう(笑)」
――「お互い傷付け合った関係だ」ってところから始まって、《ひとつになっていく/全てが始まる》っていう感覚に持っていくっていう。これもある種の宗教的感覚だよね。
「ふははははは。それもアリかもしれないすね、宗教がゴールっていうのも」
――でも、そういうもんじゃない? 宗教的感覚ってアートにとって重要じゃん?
「音楽はとくにですよね。ファンの人たちって信仰的だし。じゃあ、ウチのギターが教祖として――」
――自分じゃないのかよ(笑)。
「見た目的に(笑)」
――「カリスマになりたい」って気持ちはないの?
「『カリスマになりたい』って気持ちはないかなあ。たぶんカリスマって意識してなれるもんじゃないのかなあっていう感じですかね。後から付いてくる言葉ですよね、カリスマって。でも、中学校の頃の将来の夢は『スター』でしたね(笑)。何のスターかわかんないですけど、とりあえず『スター』って書いてました」