肥大する夜を越えて、僕たちのニュー・プレイスに向かって
オープニング曲にしてタイトルトラックでもある“new place”で描かれるのは、真夜中のクラブのワンシーンだ。流行りのダンスミュージックと、眩く輝くライトと、夜通し続く空騒ぎ。そして、そこにまったく馴染むことのできない「僕」。目の前で展開する狂騒を眺めながら、「僕」の意識は自身の隠してきた過去へと飛ぶ。さりげないビートとギターのリフ、心の奥底にある退屈さをそのまま表に出したような福永浩平の歌声は、気付けば汗ばんでいる肌のように、じんわりと熱を帯び、心にまとわりついてくる。《だからベイベー 僕に気付いて》。
前作『sense』と比較して、まずサウンドが格段にブラッシュアップされている今回のミニアルバム。イメージが整理され、必要なものが必要なだけ配置されている今作のプロダクションによって、新たに引き出されたものとは、ほかならぬ福永という男の内面性だった。波紋だらけだった水面が静かになり、その底に何が沈んでいるかがクリアに見えてくるような――たとえるならそんな鮮烈な体験を、この『new place』を聴きながら僕は何度もした。
エモーショナルなラブソング“僕≠僕”でも、センチメンタルなシューゲイズチューン“夜の匂い”でも、ポジティヴに「ひとつになる」と歌う“YES”でも、福永の書く歌詞の根底に流れるのは拭いようもない孤独だ。その孤独はポジティヴでもネガティヴでもなく、単に「そういうもの」として描き出される。世界は自分を写す鏡などではなく、むしろそこに映らないものにこそ「自分自身」はある。しかし、同時にこのミニアルバムは明確に「その先」を志向してもいる。文字通り「新しい場所」と名付けられたこの作品は、来る未来に向けてのひとつの前奏曲だ。
音楽のみにとどまらず、ファッションやアートの分野にも貪欲に手を伸ばそうとする雨のパレードというプロジェクトが目指すのは、世界そのものを描ききることだ。孤独に膨らんだ夜を乗り越えて、その先にある自分たちの場所へ。雨のパレードの旅はまだ始まったばかりである。(小川智宏)
ディスク情報
3rd mini album 『new place』
発売中
ZNR-139 ¥2,000(+tax)
- new place
- encore
- bam
- insr / □
- 僕≠僕
- 夜の匂い
- YES
- AM4:29
ライヴ情報
『new place』release tour「肥大する夜」
- ・2015/7/7(火) 心斎橋FanJ
【出演】雨のパレード / and more - ・ 2015/7/9(木) 福岡graf
【出演】雨のパレード / and more - ・2015/7/10(金) 鹿児島SR Hall
【出演】雨のパレード / and more - ・2015/7/12(日) 広島4.14
【出演】雨のパレード / セプテンバーミー / phonon / PURPLE HUMPTY / and more - ・2015/7/14(火) 名古屋APOLLO BASE
【出演】雨のパレード / and more - ・2015/7/17(金) 札幌Sound Lab mole
【出演】雨のパレード / and more - ・2015/7/22(水) 仙台enn 3rd
【出演】雨のパレード / LILI LIMIT / and more - ・2015/7/24(金) 渋谷 TSUTAYA O-nest
【出演】雨のパレード/TOKYOGUM
提供:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
企画・制作:RO69編集部