J-POPのヒット曲をダイナミックに連発するDJ和。邦楽ロックを中心としたプレイを得意とするやついいちろう(エレキコミック)。ロックフェスも含めた様々なイベントを熱く盛り上げ、リリースしたMIX CDも人気シリーズとなっているふたりの対談が実現! シンガロングを誘って止まない日本語ナンバーへの深い愛に満ちた彼らのスタイルは、どのようにして生まれたのか? ロックフェスに対する想いとは? そして、出演が間近に迫っている「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」への意気込みも語り合ってもらった。

司会=田中大 撮影=安田季那子

やついさんのDJは「行ってよかったな」ってなる。一緒に時間を共有する感じがすごい良いなと思って(DJ和)

芸人なんで、芸人の要素を入れたいんですよね。入れたいっていうか、そうなっちゃう。DJは素人だけど、そっちのスキルはすごい伸びてる(笑)(やつい)

──お互いに面識はありますよね?

やついいちろう はい。でも、会ったの、結構前ですよね。何回かお会いしていますけど。

DJ和 お会いするのは久しぶりですね。

──なるほど。では、改めての自己紹介も兼ねて、お互いのDJとしての歩みを語り合う辺りから対談を始めていただければと思います。

やついいちろう わかりました。和さんはもともとずっとDJですか?

DJ和 そうです。ヒップホップのDJから始めました。学生の頃、渋谷のレコード屋をグルグルするような生活で。渋谷のクラブはヒップホップのイベントが多かったんですけど、そんな中でDJをやるようになったのが僕の最初です。

やついいちろう じゃあ、今はだいぶ違うところに来たんですね。

DJ和 そうなりますね(笑)。ずっと洋楽のレコードでやっていて、最初の2、3年は憧れのDJさんの真似をする感じだったんですけど、慣れてくるとオリジナリティを出したくなるじゃないですか。それで邦楽をかけ始めたんです。当時のクラブって邦楽をかけちゃいけないような洋楽至上主義みたいな雰囲気だったんですけど、そういうなかで日本語の曲を流すのって面白いなと。

やついいちろう じゃあ、MIX CDを出すようになったのも、フロアでそういうスタイルのDJをやっていたところに話が来たんですか?

DJ和 いや。最初の頃はヒップホップDJをやって、最後の2、3曲でJ-POPを流すような感じだったんです。だからいろんなイベントへの参加のスタンスとしてはヒップホップのDJ。でも、日本語だけでやろうと決めた頃に今のプロデューサーに会って、MIX CDを出す話になっていったんですよ。それが2006、2007年頃なんですけど。

やついいちろう そうだったんだ。僕は渋谷のクラブのイベントに誘われてDJをやったのがきっかけ。DJなんてやったことなかったんだけど、「かけるだけだから」って言われて(笑)。その時に曽我部恵一さんも出ていて、「いいね。やれば?」と。それで、「じゃあやろうかな」って(笑)。そんな流れで今に至っています。それは2002年くらいなのかな?

──和さんは86年生まれでやついさんは74年生まれですよね。それぞれ、どんな音楽を聴いて育ったんでしょうか?

やついいちろう 寅年?

DJ和 そうです。

やついいちろう 僕も寅年。ちょうどひと回り違うんだね。僕はバンドブーム直撃世代。それまでは普通に歌謡曲を聴いていて。でも、そういうなかでもゴダイゴとか、サザンとか。洋楽の匂いのするバンドサウンドが好きだったんですよね。やがて小6か中1くらいの頃にTHE BLUE HEARTSが出てきて衝撃を受けて、バンドをいろいろ聴きだしたんです。それくらいの頃、まさにCDも普及し始めて。CDプレイヤーをまだ持っていなかった頃にPERSONZの2ndアルバムを買った思い出があります。CDを眺めながら「どんな歌なんだろうな?」と(笑)。まあ、そんな感じでバンドをいっぱい聴いて、やがて渋谷系が流行り始めたんですけど。あとマンチェスターのブームがあったり。中2、3の頃からは洋楽を聴くのがカッコいいような気がし始めて、レンタルCD屋でいろいろロッククラシックを借りて聴いていました。高校の頃は洋楽しか聴かない時期もあったなあ。でも、大学に入って東京に来てからは洋楽しか聴いていないというのが徐々にしょうもなく思えてきて、邦楽にまた戻ってきたんですよね。

DJ和 僕が意識的に音楽を聴くようになったのは90年代以降です。小学校高学年辺りが90年代半ば過ぎとかなのかな? だからCDが一番売れていたような時代なんですよね。

やついいちろう 小室サウンドの全盛期?

DJ和 まさしくですね。その音楽で育ったという感じがあります。小室さんの音楽を聴いていたので打ち込みの音が好きになって。それでクラブの音楽を聴くようになったんです。

やついいちろう 学生の頃、学祭でバンドとかありました?

DJ和 あったんですけど、部屋を暗くしてクラブをやったりしていましたよ。

やついいちろう 僕の頃、クラブなんて発想はなかった。みんなコピーバンド。TM NETWORKのコピーバンドをやっていた友達が100万円くらいかけて機材を揃えていたのを覚えています。みんな2万円くらいのギターでやっている中、「100万円バンド」って呼ばれていたんですけど(笑)。

DJ和さんは尽くすDJ。サービス精神が旺盛。お客さんのせいにしないから。お客さんが誰であれ、どうであれ盛り上がるようにするっていう(やつい)

カラオケに行った時の二次会の感じ。みんなが知っている曲を聴きながら肩を組み合って大合唱するような。そういう風になりたいなと思っています(DJ和)

──(笑)おふたりは今やいろんな現場でDJをやったり、MIX CDも大人気ですが、お互いのスタイルに関してどんな印象を持っています?

DJ和 やついさんのDJ、すごく勉強になります。

やついいちろう いえいえ、とんでもない(笑)。僕はド素人ですから。ド素人のまま芸歴だけ長くなってきたというのがびっくり。一切上手くなっていないですよ。機材のことも分からないですし。再生することと、マイクで喋ることくらいしか分からないですから。

DJ和 そのスタイルが、すごくフェス向きだと思います。今の時代はそっちのDJのほうが、求められているなと思っています。綺麗に繋ぐとか上手いとかいうことが必要な世界もありますけど、そういうことよりは「その時間をどれだけ楽しめたか?」っていうことが重視されているところもあると思うので。やついさんのDJは「行ってよかったな」ってなります。一緒に時間を共有した気持ちになるんですよね。

やついいちろう 僕は芸人なので、芸人の要素が普通に出るんですよね。芸人として呼ばれているというのが、そもそもDJとしてのスタートなので。だから曲をかけつつも面白いことをやりたいし、やってしまうんですよね。

──やついさんが感じる和さんの魅力って?

やついいちろう やっぱ、ヒットメドレーってところじゃないですか? 何だろう? 完全に自分を消している感じ?(笑)。それがすごいと思うんですよ。DJってちょっとは自分が知っているマニアックなものを入れたくなるところがあると思うんですけど、一切入れないですからね。その腹の括り方がすごいと思います。「やっぱそれ聴きたいじゃん」っていうのをカッコつけずにかけるスタイルというか。それが僕と共通するものを感じます。ネットのない時代は、みんながまだ知らない最新の音楽をかけるっていうのがDJの仕事だったんでしょうし、今ももちろんそういう要素はあると思います。それが上手いDJもいらっしゃいますけど、今はそれだけでもないのかなと。「対応していくもんじゃないの? DJは」って思うんですよね。こういうのってお笑いでもよくあるんですよ。「客が悪い」みたいなことを言う人が。その点、和さんは尽くすDJ。

DJ和 なるほど(笑)。

やついいちろう サービス精神が旺盛。お客さんのせいにしないから。お客さんが誰であれ、どうであれ盛り上がるようにするっていう。僕なんかもスーパーの営業でDJをやることがありますからね。そういう場所じゃ最新の音をかけても誰も足を止めないですよ。和さんもそういうことができるところが良いなと思っています。

DJ和 僕も日本語の曲をかけるようになってから、かなり腹を括りました。いろんなレコードをディグるDJのカッコよさもあるわけですけど、正反対も必要だなと思ったんですよね。だから大怪我してもいいからそっちに飛び込んで、「僕はこっちでやりますから」と。

やついいちろう そんな自己犠牲の精神が(笑)。でも、やっぱり人が集まってなんぼじゃないですか。選民的になるとカルチャーって衰退しますから。そして、人が来なくなる人ほど「客が悪い」みたいな文句を言うわけだし。人気があるものほど力があるものだし、お客さんが求めているものなんですよね。だから、ヒットメドレーの和さんのMIX CDもすごいですよ。僕のほうがまだカッコつけている感じがあるし。

DJ和 とんでもないです。僕、MIX CDとかDJに関して思っているのは、カラオケに行った時の二次会の感じ。あれをイメージするのが、一番みんなが楽しんでいる状況になるんじゃないかなと。みんなが知っている曲を聴きながら肩を組み合って大合唱するような。そういう風になりたいなと思っています。

↑TOPに戻る

公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする