ドレスコーズ ダブルタイアップの超強力作
『人間ビデオ』を語る(2)
ドレスコーズにメンバー増えました、今度は漫画のキャラクターです。そして僕はボーカルの座すらいらないっていう
――歌詞も原作をモチーフにしてるんですね。
「そうです、さっき言ってた、点在していたゆえの、僕のパーソナルなことを載せる気はさらさらないというところで作りたいなと。原作が好きというのも大きいですね。『GANTZ:O』のための曲を作ります、という感じで」
――イントロから詰め込んでそこに言葉を乗っけていく感じが志磨さんには珍しいですね。
「そうですね。アップテンポなもので、わーっと疾走感があるようなものがいいですねと、原作の先生とか映画の関係者の方にはご注文いただいて。『GANTZ:O』って、ちょっとSFのような感じがありますから、それがCGだと余計に、ね。すごく情報量が多い感じにしたいなと。すごい早口ですごい情報量をまくしたてるっていう、そういうのがいいだろうというのが、最初からあったので」
――3曲目の“2MC & 3次元”は1曲目の“人間ビデオ”を下敷きにして?
「そう。これはドレスコーズにメンバーが増えました、今度は漫画のキャラクターです、ついに次元を超えました、っていう。ボーカルの座も譲って。僕はそれすらいらないっていう」
――パートではなく象徴ですか(笑)
「そうなんですよ、今は(笑)。もしくは概念。この曲が完成したとき『僕は何なんやろう』『ドレスコーズって何なんやろ』って本当に思いましたもん」
――この曲はどういういきさつで?
「これは『GANTZ:O』とドレスコーズの組み合わせで、もう1曲ぐらい何かやりません?ってなって。じゃあ、加藤と玄野にメンバーに入ってもらってボーカルをやってもらおうと。それで、どうせなら作詞もやってほしいなということで作品の中で彼らが発した言葉を、多少言葉尻とかは変えても、メロディに乗せちゃえば彼らの作詞ってことになるなって。だから歌詞は原作からの引用ですね」
――声優さんって発声が違いますよね。
「そうそうそう! 台詞のところとか感動しましたね。そのキャラクターとしてやってくださるんですよ。ここまで蓮っ葉な言い方はしないでしょうねえ、とか言いながら少しずつキャラクターに近づいていって」
――梶裕貴さんが玄野になっていくんですね。
「そうなんです。やってくださった声優さんも僕すごい好きな方だったから、ただの職権乱用みたいな感じです。ジャケットも奥先生に描いていただいて。好き放題ですよね」
もし許されるのであれば、自分のためじゃなく映画の主人公のために歌いたい
――2曲目を提供した『溺れるナイフ』は対極の、センチメンタルでロマンチックな映画ですね。しかも毛皮のマリーズの“コミック・ジェネレイション”ということで。いかにしてこのようなことに?
「最初は、演技をしてくださいませんかというお話があって。エーッとびっくりしたんですけど、山戸結希という映画監督がすごく好きで、これがメジャーデビュー作なんですよね。それで、僕でよければいかようにも使ってくださいとお伝えして。その映画の撮影が先にあって、あーよかったよかった面白いなーと普通に終わってたんですね、1年ぐらい前に。しばらく経って監督から、実は“コミック・ジェネレイション”が、ずっと撮ってる時に頭にあって、よかったら使わせてくださいと。びっくりしまして。でもまあ映画の完成間近で、この曲が使いたくなったと言ってもらえるのは素直に嬉しいなあと。なんでこの曲なのかもなんとなくわかるし、それは嬉しいですぜひぜひと。でも難しいのは、僕がその……さっきの話じゃないですけど、すごい、特殊な、なんていうのかな……自己完結型の歌手です、と」
――はい。
「だから“コミック・ジェネレイション”が20代の頃の自分の曲で、好きなものではあるが本当に映画の邪魔になりませんかねえ、というのが心配で。『GANTZ:O』とか、ほかに提供する曲だと気にならなかったのが、今回は自分も端役で出たもので。『映画の世界に端役で出た人間が、最後に自分のために歌うという、複雑な構造になりませんかねえ』って。急に主役の邪魔をするみたいで、ぶち壊しになるんじゃなかろうかって相談をして。もし許されるのであれば、自分のためじゃなく映画の主人公の男の子と女の子のためにこの曲を歌うという、ただの僕の心持ちの問題なんですけどね。メロディも歌詞も一緒で、演奏も同じにするけれど、もう一度ふたりのために歌う、というのにしたいなあ、という話をして。監督も喜んでくれて、録り直しする、ということになったんですよね」
――はたから見たら考えすぎでは?という気もしますが。それは毛皮のマリーズで歌ったものを使いたくないということではなくて?
「毛皮のマリーズで、というのは全くないんですよ。あの曲の中で、一人称は完全に僕のことなんですよね。それがすごい気になって。第三者視線で歌ってみたいという。主人公のふたりを祝福する感じになると、映画にぴったりになるんですよ。演奏もね、毛皮のマリーズってすごい――あの、わがままな演奏をするバンドなんですよ。男前と美少女の素敵なロマンスに、ま~そぐわないそぐわない」
――そうですかねえ、聴き直してもそんな風には思いませんでしたが。
「そうですかぁ? 僕だけかなー。映画のことは細かく言うとネタバレだから言えないですが、最後のわーっと気持ちのいいシーン、すごくいいショットでドンドンドドドン!てドラムが入ると、一気にそこが高円寺のスタジオになるんですよ」
――録音した時の記憶でしょうか(笑)
「いきなり割り込まれる感じ、すごかったですよ。試写では、映像に曲をはめてたんですよ。そしたら、いきなり高円寺のスタジオの音が(笑)。絶対僕しか、4人しか思わないでしょうけど、ありありとね」
――マリーズの演奏と、曲の長さがほぼ一緒でテンポも同じだからリマスターしたのかなと思ったんですけど。元通りに演奏し直したんですか。
「そうです、録り方を変えたという感じですかね」
――“コミック・ジェネレイション”は当時もマリーズらしい、いい曲だなと思いましたが、改めてポップでいい曲だなと再発見しました。
「当時シングルを作りましょうって言われて、最初にこの曲を持ってったんですよね。そうしたら、『いい曲だけど、もう一声』って言われて、『え~、これいいのに』ってぶつくさ言いながら、急いでもう1曲、その時A面になった“Mary Lou”を作って。このこはかわいそうにB面になり。僕はすごく気に入ってましたねえ」
――もう1回歌い直す機会がきて溜飲が下がりました?
「でもまたB面っていう。かわいそうに(笑)」
毛皮のマリーズは富士山さんのバンドなんです。だからそんなに気を張る必要がなかった
――毛皮のマリーズは、志磨さんがフロントですけど全員で1個のものを作っていく佇まい、でも今は志磨さんがいて成り立つバンドですよね。
「そうですね、自分が真ん中に。錚々たるメンツでいつもやれるのは幸せですが、自分が相当ちゃんとしてないと僕が添え物になっちゃうから。それこそ『なんやねんドレスコーズ』ってなっちゃうから、がんばろ、って思いますね、前以上に。毛皮のマリーズは富士山(富士夫/Dr.)さんのバンドなんですね。富士山さんが毛皮のマリーズなんですよ。だからそんなに気を張る必要がなかったというか。そうそう、ドレスコーズ結成してからですね、ちゃんと、立派な人になろう、みたいな(笑)」
――ところで映画初出演はどうだったんですか
「もういいです。できる精一杯をやりました(笑)。やってみると、あ~クソッとか思うんですよ。レコーディングやと、『あ、すみませんもう1回』とかできるじゃないですか。でも映画は監督がOKってなったらこっちが『へえっ?』と思ってもOKなんですよ。自分以外の人がジャッジする、だから、もういいんですよ。監督がよければいいんです」
――またやってみたそうですね。
「1回やると、『あ~、あそこをもっと』というところが出てきて、またやりたくなるんですよ。最初は1本もやるものかと思ってましたし、山戸さんが言うなら、恥ぐらいかきましょうという感じだったんですけど。やってみると『クソ~ッ』って(笑)」
――そのうち自分で監督も、とか言いそうですね。
「いやー恐ろしい、完璧叩かれるパターンに入ってるじゃないですか(笑)」
ミュージックビデオ
“GANTZ:O ANIMATION Music Video“
(フル3DCGアニメ映画「GANTZ:O」主題歌)
(フル3DCG映画「GANTZ:O」キャラクターソング)
リリース情報
『人間ビデオ』
発売中
R.I.P.デラックス盤(CD+DVD):¥4,800+税 / KICM-91708
CD収録曲:
1.人間ビデオ(フル3DCGアニメーション映画『GANTZ:O』主題歌)
2.コミック・ジェネレイション(映画『溺れるナイフ』主題歌)
3.人間ビデオ(off vocal ver.)
4.コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)
DVD収録内容:
R.I.P. TOUR FINAL 横浜 Bay Hall 公演
GANTZ:O盤(CD+DVD):¥2,200+税 / KIZM-451~2
CD収録曲:
1.人間ビデオ(フル3DCGアニメーション映画『GANTZ:O』主題歌)
2.2MC & 3次元 / Vocal:玄野 計(CV.梶 裕貴)・加藤 勝(CV.小野大輔)
3.人間ビデオ(off vocal ver.)
4.2MC & 3次元(off vocal ver.)
DVD収録内容:
・人間ビデオ ミュージックビデオ
・2MC & 3次元 ミュージックビデオ
通常盤(CD):¥1,000+税 / KICM-1731
CD収録曲:
1.人間ビデオ(フル3DCGアニメーション映画『GANTZ:O』主題歌)
2.コミック・ジェネレイション(映画『溺れるナイフ』主題歌)
3.人間ビデオ(off vocal ver.)
4.コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)
ライブ情報
「女王蜂主催対バンツアー 蜜蜂ナイト2 ~売旬~」
日程:2016年11月7日(月)
会場:大阪 umeda AKASO
開場 / 開演:18:00 / 19:00
共演:女王蜂
チケット料金:¥4,320(税込 / 別途要ドリンク代)
「12月24日のドレスコーズ」
日程:2016年12月24日(土)
会場:恵比寿 The Garden Hall
開場 / 開演:16:00 / 17:00
チケット:指定席¥7,000
※ドリンク代別
※年齢制限:小学生未満は入場不可(入場者全てチケットが必要)
提供:EVIL LINE RECORDS
企画・制作:RO69編集部