浜崎貴司、初のベストアルバム『シルシ』で振り返る、ソロ18年・苦闘と出会いの足跡(2)
和義くんと一緒に作った時の感じがとってもよくて。録音のしかたが乱暴で
――じゃあどのように共作をしていったのか、いくつか実例をうかがいたいんですが。たとえば、斉藤和義さんとは──。
「和義くんは、最初は、彼がデビューした頃にリハスタが同じで、同じ栃木県出身だっていうことであいさつに来てくれたんですけど。だけどその頃は、機嫌の悪い時期の盛りだったので、『ああ、どうも』とかだけで、しれっとしちゃったんですよね。いまだに和義くんに言われますけど(笑)。それからずいぶん時が経って、打ち上げみたいなところでばったり会って……もう俺もギスギスしてなかったのかな? まあ、もう『斉藤和義ってかっこいいよな。おもしろい人だな』って興味もあった頃で。その時、“オリオン通り”っていう地元の商店街の曲を作ろうと思ってたんです。そしたらうまくいかなくて、一回ボツにしようとした日の夜に会ったんですよね。で、『浜崎さん、最近俺ね、いまいち詞が書けないんですよ』ってなことを言うから、『和義くん、いいネタがあるよ。同じ栃木じゃないですか、我々。オリオン通りっていう商店街あるでしょ、あの歌を作ったらいいよ。あげるよ、このネタ』ってあげたんですけど、『一緒に作りましょうよ』って言ってくれて。で、俺が考えてたアイディアと、和義くんが最初に思いついたメロディを持って、一緒にスタジオに入ったんですよ」
――これは斉藤さんのアルバムに入った曲ですよね。
「そう。一緒に作った時の感じがとってもよくて。録音のしかたが乱暴で。俺はFLYING KIDSでもソロでも、ものすごいリハやった挙句に録音するっていうパターンだったんですけど、和義くんが『曲できたあ。じゃあ録りますか』って言うから、デモテープを録んのかなと思ったわけ。で、ふたりの歌とギターを一緒に録ったら、『じゃあこれにドラムを入れてみますね』って、和義くんがドラムを叩いて録り始めて。ディレクターに『これってどういうこと?』ってきいたら『いやあ、これはひょっとしたら、本チャンになってるんでしょうね』『マジかよ!?』っつって(笑)」
――ディレクターもつかみきれてないんだ(笑)。
「でも雑なのよ、ドラムとかも。でも本人、いい感じのつもりで戻ってきて『どうっすか?』って言うから『いや、もう一回ぐらい録った方がいいんじゃねえ?』『そうすかねえ』なんて。そしたら『ベース入れます』『じゃあ浜崎さん、コーラス入れてください』ってやっていくから『……本当にこれが本チャンなのね』って(笑)。当時もうコンピューターで動く卓があって、細かく打ち込んでトラックダウンするのが普通なんだけど、そのスタジオは古い卓しかなくて、エンジニアが手でフェーダーを動かしてるわけですよ。でも『できた』って言うから『本番のトラックダウンはいつやんの?』『いや、これでいいと思いますけど』『嘘だろ!?』って(笑)。すごいなと思って、それで気に入っちゃったんですよね、和義くんを」
民生くんとは不思議な一体感があって。なんか一緒に歌うと、ビシッとくるんですよね
――民生さんとは、最初はどういう関わりだったんでしたっけ?
「民生くんはねえ、同世代の中でもスターだったし、やっぱり才能が満ちあふれてましたから。何回か会ったことあったんですけど、またお互い機嫌悪い時期だったのね(笑)。でもなんかのイベントで一緒になった時にちょいちょい話すようになって、そのうちに『GACHI』に出てくれたりして。会えば話すぐらいの感じから、『曲を一緒に作れないかな』『いいよ、やろう』って話になって。で、ミーティングの日の出がけにパッと思いついたのが、“君と僕”の最初の部分の歌詞とメロディで。『さっき作ったの聴かせるわ』って目の前で歌ったら『いいんじゃない、それでいこうよ』って言うから、録音してメールで送ったのね。そしたら1週間ぐらいで……俺のデモテープから始まって、途中で民生くんのデモテープにバスンとつながる曲が返ってきたんですよ。それが完璧で、聴いたら泣きそうになっちゃって。なんか、民生くんの声も感極まっているようなデモテープになってて、歌いながらちょっと盛り上がったんじゃねえかな、っていう気もしたの」
――へえー!
「で、残りの部分を俺が作って、スタジオに入ったのね。そしたら『じゃあまずゴミ箱の音から録ろうか』って言うわけ。スタジオにあるゴミ箱をキックとスネアの役割でふたりで分けて叩いて録ったんです。それからふたりで『せーの』で歌とギターを録って、そのあともう一回ゴミ箱を録り直したりして(笑)。その曲を後日、ライヴで披露する機会があった時に不思議な一体感があって。なんか一緒に歌うと、ビシッとくるんですよね。あと、同級生っていう感じが不思議とやっぱりあるなあ、とは思いますね。だから今はすごいよく会うし」
KING、「かわいいわあ」と思って(笑)。すてきだなあと
――いちばん新しい“君の笑顔”を一緒に作ったYO-KINGは──。
「最初はデビューした頃、学園祭で一緒になったんじゃないかな。でも当時はまたみんなギスギスしてたから、『あ、どうも』ぐらいの感じで(笑)。それから何年か経って、ばったりスタジオで会って『あ、どうも』って言った時は、向こうがなんとなく開いてる感じがしたの。でもその時も、それで終わって。また何年か経って、仕事仲間と俺が飲んでる時に、その人がKINGと仲よくて、KINGから『今どこにいんの?』って電話がかかってきて『今、浜ちゃんと飲んでるよ。来る?』って言ったら、来たんですよ。すごい久しぶりだったんだけど、俺の顔を見て『横に座っちゃおうかなー』って言うわけ。『どうぞどうぞ』『うぃーっす』って座って……『かわいいわあ』と思って(笑)」
――はははは。目に浮かびます(笑)。
「すてきだなあと。普通、知ってる人のそばに座るっていうステップを踏むじゃないですか。そういうのしないでワッと入ってくるとこが、すげえかっこいいなと思って。それ以来、好きになっちゃって……っていう付き合いですけど」
――共作のこともお願いします(笑)。
「これは、コマーシャルの曲を誰かと一緒に、『GACHI』みたいな感じで作ってくれないですか、っていうオファーが来て、それでYO-KINGに声をかけたんですけど。一緒にスタジオに入ったら、『できたよー、朝。曲、作ってきた』って。《気合い入れるのさ》っていう歌詞で……『使ったことねえわあ、この言葉。いいかも。YO-KINGとやると、こういう言葉、使えるんだな』と思って。人を励ます歌を作るっていう、まっすぐな命題に向かっていく曲なんですけど。そういうのをなるべくしないように生きてきたんですよ」
――ああ、確かにそうですよね。
「ねえ。でも最近さ、ミュージシャン同士でLINEとかやってると……『これから本番なんで行ってきます』『がんばれよ』みたいな。俺も言われたりするの、『がんばれよ』って。単純な『がんばれよ』って言葉で、なんかすごい元気になるのね。悪くないな、そんな気持ちで人を励ましてもかまわないんだろうな、と思って。働いてるお父さんとかお母さんが元気になる歌を歌いたい、KINGもいればできるんじゃないかなと思って」
自分なりのゴスペルを作ろうとしてるんだな、と。魂の問題について探求していく、っていうのかな
――あとほかに、このアルバムを聴き直して、「ああ、俺はこういうことがやりたいんだなあ」と改めて気づいたようなことって、何かありました?
「やりたいことは変わらないんですけど、でもじゃあ結局それはなんなんだ、っていう話で……最近思ったのは、自分なりのゴスペルを作ろうとしてるんだな、と。魂の問題っていうのかな、それを歌にするっていうのが、ずっとやろうとしてることなんだろうな、っていう気がして。最初にロックンロールを聴いて電流が流れた、みたいな話があるじゃないですか? 僕の場合はジョン・レノンなんですよね。小学校3年生の時に聴いて、シャウトがすごくかっこよくて、本当に自分の中に電気が流れたって気がしたわけ。で、ソロになった頃に、一時またジョン・レノンを研究してたんですよね。それを昨日ふと思い出して昔の譜面とか見たら“ハウ?”とかコピーしてるわけ。なんだったんだろう?と思って。言っちゃえばジョン・レノンもゴスペルなんですよね、ロックンロールというスタイルの中の。ゴスペルという言い方が正しいかどうかわからないですけど──」
――いや、わかります。
「魂の問題について探求していくっていうのかな。改めてこのソロのベストアルバムを聴くと、そういうことをずっと探してる歌が多いなという気がしますね。命とかの話の中に、ポップスみたいなもの、ダンスミュージックみたいなものが登場する、解放感みたいなものが表れる、っていう音楽が、僕がずっと探してるものなのかなっていう」
ミュージックビデオ
リリース情報
TAKASHI HAMAZAKI BEST ALBUM『シルシ』
NOW ON SALE
VICL-64527 3,000円+税
01. BAILA BAILA ※新曲
02. サンクチュアリ (SEIなるふたり)
03. 呼吸のしるし
04. MUSASINO
05. オンナLIFE
06. 時はただ今だけを乗せて
07. ダンス☆ナンバー
08. 恋サクラビト (featuring 小泉今日子)
09. トワイライト (NEW VERSION)
10. サーフライダー / MCU feat.浜崎貴司
11. オリオン通り / 斉藤和義&浜崎貴司
12. 君と僕 / 浜崎貴司 × 奥田民生
13. ウィスキー / 浜崎貴司 × おおはた雄一
14. 君の笑顔 / 浜崎貴司 × YO-KING ※新曲 [日本アイコムオリジナルCMソング]
15. ゴールデンタイム
16. 幸せであるように (GACHI 高野山開創1200年 LIVE ver.)
〈初回封入特典〉
ベスト盤 「SIRUSI」 発売記念ライブ~今回はソロだけどバンドだぞ!
東京・大阪会場 リハーサル招待+記念のシルシ”浜崎貴司とステージ上で集合写真撮影”応募券
ライヴ情報
ベスト盤 「SIRUSI」 発売記念ライブ~今回はソロだけどバンドだぞ!
OSAKAソロバン / 浜崎貴司&45trio 2016年4月2日(土) UMEDA CLUB QUATTRO
TOKYOソロバン / 浜崎貴司&45trio 2016年4月16日(土) shibuya duo MUSIC EXCHANGE
浜崎貴司 弾き語りツアー ”LIFE WORKS LIVE ~Since2011/終わりなきひとり旅” ベスト盤 「SIRUSI」 発売記念スペシャル2DAYS
[sono106] 2016年3月19日(土) 宇都宮 コーヒー・ルンバ
[sono107] 2016年3月20日(日) 宇都宮 コーヒー・ルンバ
日本アイコム presents 浜崎貴司「出前GACHI」
015 ~広島場所 浜崎貴司vs.YO-KING 2016年4月1日(金) LIVE JUKE
016 ~松山場所 浜崎貴司vs.YO-KING 2016年4月9日(土) W studio Red
017 ~福岡場所 浜崎貴司vs.YO-KING 2016年4月10日(日) ROOMS
FLYING KIDS 関東ファンク旅団2016
2016年2月27日(土) 前橋 DYVER
2016年3月25日(金) 横浜 THUMBS UP
提供:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
企画・制作:RO69編集部