イトヲカシ 初の全国盤、フェス出演、路上ライブツアー……激動の1年を今振り返る

昨年9月のメジャーデビュー作『スターダスト/宿り星』に続く、伊東歌詞太郎&宮田“レフティ”リョウのユニット=イトヲカシの両A面ニューシングル『さいごまで/カナデアイ』完成! 「バンドシーンの落武者→ネットシーンの成功者」という道程の先に新たな「王道の音楽」を確立しつつあるふたりの姿は、それ自体が今この時代のポップミュージックの夢と希望そのものだ。
初の全国流通盤『捲土重来』リリース、全国20都市で計1万7千人を動員した路上ライブツアーと初のライブハウスツアー、フェスへの出演、そしてメジャーデビュー……激動の2016年を経て、2017年のイトヲカシが目指す音楽の在り方とは? そのビジョンを改めてじっくり語ってもらった。
距離を置くとわかる彼女の大切さ、みたいな(笑)。「音楽やりたいなあ」「ああ、やっぱり音楽を愛してるんだなあ」って
――メジャーデビューという大きなターニングポイントがあったというだけでなく、ライブ活動も含め、2016年はイトヲカシにとって重要な1年だったと思うんですけども?
伊東歌詞太郎(Vo) 僕は、ものすごくいっぱい歌った年だなと思っていて。ライブもする、制作でもレコーディングでも歌うし、イベントもリハもそうだし……っていうのを全部合わせて、どれだけ歌ってたんだろう? って気になって、年末に数えたんですよ。そしたら、366日のうち252日歌を歌っていて(笑)。3日に2日以上歌ってたことになるんですけど、それで歌に飽きるとか、歌に対する楽しさが減ったか? っていうと、全然そんなことなくて。僕はもっと歌いたいなっていう願望があるし、2016年は「歌を歌う喜び」を改めて教えてくれた1年だったなって感じてます。
宮田“レフティ”リョウ(B・G・Key) 「激動」っていう二文字がちょうどいいぐらい――去年のツアーのこととかを思い返すと、「本当に去年だったっけ?」みたいなタイム感で。こうやって毎日音楽をやれる環境ができたっていうことが、マジでありがたいことだなって思って。年始に入って、あえて1月の1日から5日ぐらいまで、音楽に一切触れないようにしてたんですよ。そしたらもう……すごく息苦しくなって。距離を置くとわかる彼女の大切さ、みたいな(笑)。「音楽やりたいなあ」「アウトプットしたいなあ」っていう気持ちがすごく強くなってきたので。「ああ、やっぱり音楽を愛してるんだなあ」って。
伊東 僕は2017年、本当にすげえ難しい目標だと思うんですけど、去年の252日よりももっと歌を歌いたいなあって。そのためには、去年より強い自分にならなくちゃいけないし、去年より歌を愛していかないとできないと思うので。俺らふたりとも去年、音楽にどっぷり浸かったつもりでいながらも、どっかで渇望してる部分があって、それが大きくなっていってる気がしますね。
宮田 そもそも仕事っていう感覚があんまりないっていうか、やっぱり音楽って人生の根本のものだったし、今でも好きなことをやってるっていう感覚が強くて。だから、ただやりたいって思ってますね。今年も、音楽にまみれて、まみれきりたいなと思います。
――音楽にまみれていけばいくほど渇望感が生まれていく、その感覚って何でしょうね?
伊東 やっぱり俺は、世界で一番いい歌を歌いたくて。それって自分が前進していかないと――その目標は前にあるものだから、去年も、ずっとこれまでも、一歩一歩進んできたつもりなんですよ。そうなってくると、昔は見えなかったものが先に見えてくるから、早くそれを掴み取りたいというか、通過したいというか。そこを通過するためには、もっともっと昔より大変にはなってきてるんですけど、それをどっかで求めてる自分もいるというか。「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」っていう、山中鹿之介が言ったとされる台詞があるんですけど……昔は意味わかんないなと思ってたんですけど(笑)、今はその気持ちもわかるなあと。いいライブをしたら、もっといいライブをしたいっていう気持ちがどんどん重なっていく――っていうことが、続いてるんですよね。
宮田 100点満点の「満点」のハードルはどんどん上がっていくじゃないですか、俺たちが成長していくにつれて。だから、100点満点になることはないし、そこを目指したいって思うから。だから、そういう意味でも音楽ってすげえなって思うんですよ。それほど飽きないことって今までなかったから――ゲームも大好きだし、「『ウイニングイレブン』だったらずっと引きこもってやっていられる!」って思ったけど、結局飽きたし(笑)。僕はやっぱり、音楽が楽しくてしょうがないですね。
「その場所で結果を残す」っていう考え方ではダメで、どの場所でも結果が残るようなライブを作り上げていかないといけない
――本当の意味でイトヲカシのスタートラインだったんでしょうね、2016年は。おふたりがそれぞれバンドに夢を見て、夢破れて、ネットの世界に活動の場を求めてそこで成功を収めて、改めてユニットとして活動を始めて――っていう今までの文脈を置いておいたところで、自分たちの歌と楽曲で評価してください、っていう場所にようやく立った1年だったし、そういう意味でも大事な年でしたよね。但し書きはいいから、僕らの歌を聴いてくださいっていう。
宮田 そうですね。本当に去年1年で、僕らのそういう行間とかストーリーを知らない人にも、自分たちの音楽が届いたっていう感覚はあって。全然まだ足りないんですけど、そこから大きく広がっていくきっかけを作れた1年だったなって。これをもっともっと広げていきたいなと思いますね。
――ROCK IN JAPAN FESTIVALやCOUNTDOWN JAPANをはじめ、イトヲカシを初めて観るっていう人の前でのアクトも大きかったと思いますしね。
伊東 そうですね。本当に去年はいろんなステージを踏ませていただいたなと思うんですけど。終わってみて思うのは――「今いるお客さんを大事にする」とか「新しいお客さんを大事にする」とか、そういうことに主眼を置いてライブを構成するのって、俺はやっぱり不正解だったなと思うんですよね。自分たちの本当に届けたい音楽を、どんなステージであろうと、相手が誰であろうと、それをブレずにやっていったほうがいいかなって。「その場所で結果を残す」っていう考え方ではダメで、どの場所でも結果が残るような、そういう観点に立ってライブを作り上げていかないと……さらにその上で、じゃあ今日はどういうステージなのか? だったら少しだけここを工夫してみよう、って。そこの主従が逆転してしまったら、すごく空疎なものになってしまう、っていうのを今はすごく思ってますね。