今年1月からスタートした『ROCKIN’ON JAPAN』による新世代ライヴ・イベント「JAPAN’S NEXT」。4回目となる今回は、THE ORAL CIGARETTES/KEYTALK/グッドモーニングアメリカ/さよなら、また今度ね/ヒトリエの5組が登場し、ソールドアウトとなったTSUTAYA O-WESTを舞台に熱演が繰り広げられた。ロックの次世代を担う熱い魂がぶつかり合った一夜の模様を詳細レポート!
今年の1月にスタートしてはや4回目の開催を数える、「rockin’ on presents JAPAN’S NEXT」。お馴染みのO-WESTで今回も新世代アクトたちが計5組、熱いステージを繰り広げるわけだが、開演に先立って前説に登場したロッキング・オン・ジャパン編集部・小川智宏も「今日のメンツは凄いです。鉄板のライヴ・アクトばかりなんで、期待してし過ぎることはないと思います!」と告げながら、新しい世代のフレッシュなエネルギーに注目する「JAPAN’S NEXT」の意図も説明していった。飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドがズラリと揃っただけあって、チケットは即刻ソールドアウト、来場者によるはち切れんばかりの期待感がひしひしと感じられる場内で、いよいよパフォーマンスがスタートだ。
さよなら、また今度ね(all pics by 鈴木公平)
さよなら、また今度ね
トップ・バッターは、『JAPAN’S NEXT』でもお馴染み、この9月にリリースしたミニ・アルバム『夕方ヘアースタイル』を携えた東名阪ツアーを終えたばかりのさよなら、また今度ねだ。
菅原達也(Vo)が「『JAPAN’S NEXT』、はじめまーす!」と景気よく挨拶を投げ掛け、けたたましいキーボード・サウンドを繰り出し“信号の奴”から猛烈なスタート・ダッシュを見せる。新作に収録されている“ミルクアイス”は、佐伯香織(B)と菅原が歌のチェイスを繰り広げる、悲しいストーリーだけれども可笑しさが込み上げるナンバー。菊地椋介(G)の鮮やかなプレイがバンドをぐいぐい引っ張るさまも痛快だ。「2日前(正しくは3日前)、ここでライヴをやりまして、夢の続きのような気分です。僕たちがガーンとやったら、どんどん盛り上がってくと思いますんで、その手伝いをさせて貰ってよろしいでしょうか!?」と告げて喝采を誘うのは菅原。豪快なサウンドと哀愁を両立させる“夕方とカミナリ”が爆音と歌を奏でるマニフェストのように響くと、今度は佐伯が新作のリード曲として“クラシックダンサー”を紹介し、クラップを巻き起こしながら恋の《ポカポカ》を永遠に封じ込めたその名ダンス・ロックを放つ。“僕あたしあなた君”で盛大に合唱を巻き起こしながらのフィナーレまで、見事トップ・バッターの役割を果たしたさよ今であった。
THE ORAL CIGARETTES
THE ORAL CIGARETTES
続いては、鮮烈な音出し一発からも意気込みがビシビシ感じられる奈良出身のTHE ORAL CIGARETTES。「次世代を担うアーティストたちの中で、ベスト・アクト狙っていきます!」と山中拓也(Vo・G)が威勢良く言い放ち、初っ端“Mr.ファントム”から鈴木重伸(G)が髪を振り乱しての激しいプレイに突入、あきらかにあきら(B・Cho)は左右に大きくステップしながら身体をスウィングさせるという、オーディエンスもあっという間に巻き込まれるような急展開だ。セクシーでグラマラスなロックンロールの魅力に、時折素っ頓狂なまでにストレンジな楽曲を混ぜ合わせ、まとめて沸騰させる。つまり、オーラルはロックの興奮に極めて貪欲なバンドなのだ。スピード感の中にも絶妙にタメを効かせた中西雅哉(Dr)のプレイに乗せて激情をほとばしらせる“N.I.R.A”を「跳ぶぞーっ!!」と一斉ジャンプで締め括ると、山中は「次世代を担うアーティストってことやけど、お客さんも次世代を担うお客さんやねん」と饒舌なMCで語りかける。更に凄かったのはこの後で、真っ向から時代に向き合う若者のアンセム“STARGET”、熱いコールを巻き起こす“大魔王参上”と、名演を連発。最後にはメジャー・デビュー曲“起死回生STORY”も美しいファルセットと共に披露した。ニューアルバム『THE BKW SHOW!!!』は、11/12リリース!
ヒトリエ
ヒトリエ
3組目は、wowaka(Vo・G)擁する4ピースのヒトリエ。歪んだ分厚い轟音で会場内の空気を掻き回すと、まずはアグレッシヴかつ前のめりな音像の中から、wowakaの巧みでキャッチーなフック満載の歌メロが転がるシングル曲“センスレス・ワンダー”でスタートだ。同期を交えた“アンチテーゼ・ジャンクガール”はwowakaのギターがトラブルに見舞われ仕切り直したが、やはりオリエンタル・テイストのユニークな旋律とバンドのスリリングなコンビネーションが楽しい。ポップ偏差値の高さをしっかり見せつけ、ロック・バンドとしての熱量も両立させたパフォーマンスだ。シノダ(G・Cho)が「順調に進んでいる、はず」と語る、現在製作中のアルバムに収録予定の新曲もここで披露されたのだが、可変拍子の複雑でスリリングなバンド・アンサンブルをキャッチーなメロディが命綱のように繋ぎ止める、曲芸のようなもの凄い曲だった。ソングライターをバンドがサポートするのではなく、ソングライターの技とバンドの技が全力で衝突し切磋琢磨している、そんなヒトリエのメカニズムがくっきりと伝わってくる。“カラノワレモノ”を経てあっという間に辿り着いた最終ナンバーは、イガラシ(B)のスラップからアップリフティングに繰り出される“踊るマネキン、唄う阿呆”だ。
KEYTALK
KEYTALK
巨匠・寺中友将(Vo・G)が「いらっしゃい! KEYTALKですヨロシクー!」と挨拶すると、首藤義勝(Vo・B)からのヴォーカル・デッドヒートを繰り広げる“パラレル”。2人の歌声を掻い潜って追い越さんばかりのギター・メロをほとばしらせるのはもちろん小野武正(G・Cho)で、そこから“コースター”という出し惜しみ無しのカチ上げセットを持ち込んで来た。もちろん新世代パワーを遺憾なく発揮するKEYTALKの4人ではあるのだが、性急なエネルギーというよりも自信の漲る、どこか新感覚の王道感すら漂わせるサウンドになってきている。「ジャパンズー!?」「ネークスト!!」と予告なしのコール&レスポンスを成功させた小野は、「次世代に相応しい曲を持ってきましたー!!」とここで新曲“MONSTER DANCE”に傾れ込む。「ソイヤ ソイヤ ソイヤ ソイヤッ」と勇壮なフックを誇り、八木優樹(Dr・Cho)がホイッスルを吹き鳴らしながらビートを繰り出す無国籍ダンス・チューンだ。さらに首藤の紹介で、風に乗るようなサウンドとロマンチックな歌心が炸裂する“エンドロール”も。共に10/22リリースのニュー・シングル『MONSTER DANCE』に収録されるが、これはヤバい。この作品で、KEYTALKは間違いなく一段上のレベルに駆け上がってしまうと思う。“MABOROSHI SUMMER”まであっという間の全7曲だったが、正直言ってしばらくの間、新曲群の衝撃から抜け出せなかった。
グッドモーニングアメリカ
グッドモーニングアメリカ
というわけで、今回のトリを務めてくれるのはグドモ。さっそくミラーボールの下でたなしん(B・Cho)が振り付け付きの郷ひろみ“2億4千万の瞳”で「ジャパーン!!」コール(この時点でサングラスを吹き飛ばしてしまう)と、続けて恒例「ファイヤー!!」コールを敢行すると、4人が揃って一気にエモい人生観の中へとダイヴしオーディエンスの合いの手を誘う“アブラカタブラ”、《他人と背比べ/したいわけじゃないのさ》と金廣真悟(Vo・G)が歌う横で渡邊幸一(G・Cho)が満面の笑みを浮かべながらギター・ソロをぶっ放す“イチ、ニッ、サンでジャンプ”と楽曲を繰り出してゆく。“拝啓、ツラツストラ”が盛大な合唱を巻き起こすと、渡邊が「最後まで残ってくれてありがとう」と感謝の言葉を投げ掛け、10/22リリースのニュー・アルバム『inトーキョーシティ』からタイトル曲を披露するのだが、渡邊の鮮烈なタッピング、金廣の昂ったままの歌メロ、ペギ(Dr)のゴロゴロと転がるグルーヴが渾然一体となった、奥行きのあるナンバーだった。今後プレイすればするほど、深く広く成長しそうな一曲だ。
続いて、ダンスとエモさを両輪に“キャッチアンドリリース”が目一杯の求心力を発揮すると、金廣は「久しぶりのO-WESTですね。思い出の場所で、初のワンマン・ツアーのファイナルがここO-WESTでした」と感慨深そうにしながらファンのサポートに感謝を伝える。「前向きなつもりなんですけど、ふとダメな自分に出会ったりしたときに、良かった頃の思い出に浸ったりします」と語りながら、「元々は歌詞が違って、今なら元の歌詞で歌ってもいいのかなと」と披露されたのは思いのたけが溢れるミディアム・ナンバー“餞の詩”だ。そしていきなりオーディエンスに歌メロが委ねられる“未来へのスパイラル”で、本編はクライマックスを迎えた。アンコールでは11月に東名阪で開催される自主企画フェス「あっ、良いライブここにあります。2014」に、この日の出演者が全員出演することも告知する。そして、3年前に「COUNTDOWN JAPAN 11/12」でも披露した“ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ”に向かうのだが、冒頭で金廣が歌詞を飛ばしてしまうという場面も。オーディエンスの助け舟に「ああそうだ、そうだねえ!」と仕切り直して、シンガロングのフィナーレへと向かっていった。
「次世代を担う」ことをそれぞれに自覚するアーティストたちが、それぞれに日々成長する姿を見せつけ、共闘する。そんな濃密なシーンの縮図を見るような、ひたすら胸を焦がしときめく一夜であった。次回「JAPANS’NEXT vol.5」は11/30(日)開催、既に出演者も発表されている(http://japansnext.jp)ので、ぜひチェックして頂きたい。(小池宏和)
さよなら、また今度ね
- 01. 信号の奴
- 02. ミルクアイス
- 03. 輝くサラダ
- 04. 夕方とカミナリ
- 05. クラシックダンサー
- 06. 瑠璃色、息白く
- 07. 僕あたしあなた君
THE ORAL CIGARETTES
- 01. Mr.ファントム
- 02. mist...
- 03. N.I.R.A
- 04. STARGET
- 05. 大魔王参上
- 06. 起死回生STORY
ヒトリエ
- 01. センスレス・ワンダー
- 02. アンチテーゼ・ジャンクガール
- 03. 新曲
- 04. るらるら
- 05. カラノワレモノ
- 06. 踊るマネキン、唄う阿呆
KEYTALK
- 01. パラレル
- 02. コースター
- 03. MURASAKI
- 04. MONSTER DANCE
- 05. エンドロール
- 06. 太陽系リフレイン
- 07. MABOROSHI SUMMER
グッドモーニングアメリカ
- 01. アブラカタブラ
- 02. イチ、ニッ、サンでジャンプ
- 03. 拝啓、ツラツストラ
- 04. inトーキョーシティ
- 05. キャッチアンドリリース
- 06. 餞の詩
- 07. 未来へのスパイラル
- (encore)
- 08. ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ