――前回のアルバムの『Contrast』よりも曲数が少ないぶん、今のまじ娘をギュッと詰め込んだ濃いシングルができましたね。
「そうですね。アルバムの反省点を生かせたんだろうなって思いました」
――それは具体的にどういうところですか?
「アルバムの時は初めてバンドでイチから録っていって、結構時間がかかってしまって。しかもホリエさんも一緒だったのでかっこいいとこ見せなきゃとか思って、『やばい、どうしよう、ここもうちょっと直したいです』みたいな感じで、凝ったらどんどんどんどんずぶずぶといってしまうような性格なので。今回はちゃんと要点突いてやってこうって思ってパッと録れて。自分の曲、“end”もそうですけど、こだわりをちゃんと言えた、みたいな感じがあって。ドラムのほんのちょっとのビートの違いとかも、『ここはこういう感じで』とか『ここはシンバルが欲しくて』とか言えるようになったと思って。中畑(大樹/Dr)さんに『わー、恐縮だ』って思いながら(笑)」
――アルバムの時はそんなに言えなかったってこと?
「私が作るデモよりもはるかにいいものができてたので、何も口出ししなくてもいいかもって思っていたんですけど、“ダージリン”ってドラムのビートとかギターの音色の違いでニュアンスが変わっちゃったりするんだなって、人が弾くところを見て初めて思って。だから、ちょっと今回は私も口出そうって思って、成長した気がします」
――この5曲は、アルバム以上にまじ娘のことがわかる感じがするんですよ。アーティストとしてのまじ娘っていうのがここから始まったなあと。
「ありがたいです。『Contrast』の時はボーカロイドの曲が大半を占めていて。人の曲なので自分のオリジナリティっていうのは全然出てなかったのかなって思ってて。今回のシングルで、やっと私の世界観を見せられていたらいいなって思います」
――まじ娘ってアーティストはこういうやつなんだとか、新たに気づいたことはありますか?
「私の世界観っていうのは、やっぱり暗いっていうのがあって。暗い、怖い、ちょっと切ないみたいな。きれいだけど怖いみたいなところがあるのかなと思って。歌詞も遠回しに言う癖があって、あんまりストレートにものを言わないというか、何かに喩えたり、よく考えたらわかるっていう歌詞を書くのが好きなので。見かけはきれいだけど中身はすごい汚いみたいな、そういう世界観なんだろうなって思っています」
――なるほどね。今回収録されてる曲の中では、どれが一番古い曲なんですか?
「“ダージリン”は5、6年前には作っていて、今になって歌詞も書き直してリアレンジもしてって感じなので、存在としては“ダージリン”が一番古いのかもしれないです。その次に“彗星のパレード”で、“mirror”って感じです」
――“彗星のパレード”はホリエさんに曲を作ってもらって。
「はい、ロックバラードな感じで。何回も言いますけど(笑)、まさかホリエさんがコーラスをして下さるなんて、今思い出しても夢のような。ははは(笑)」
――まだ反芻してるんだ(笑)。でも、今回もそのホリエさんとタッグを組んでやってるわけじゃないですか。でも“mirror”はホリエさんが作った曲に、自分で歌詞をつけるっていう、前とは違う関わり方ですよね。
「“mirror”はジャケットから先に決まって。タイトルと、鏡をテーマにするんだろうなっていうのもあって、それでスタイリストさん、フォトグラファーの安藤きをくさん、デザイナーの人とめっちゃ悩んで。手がかりがない、みたいな(笑)。どうもあんまりパンチがない感じで、誰かが切り込み隊長にならなきゃいけないんだなって思った時に、スタイリストさんが“mirror”の衣装を作ってきてくれて。うしろに背負ってるのが通称『黒まじ娘』って言われていて、もうひとりの自分をイメージした人形を私が背負っているっていう設定で。で、ジャケットは上手くいったけど、ホリエさんの曲どうなるんだろうって思っていて。『こんな感じでお願いします』っていうイメージは伝えていたんですけど、やっぱりどうなるかわからないので不安で。でもデモを聴いてみたらすごくマッチしていたので。最初は鏡を見てる自分の話にするつもりだったんですけど、ホリエさんの作ったサビを聴いて、鏡の中の自分が自我を持ってしまう話にしよう、だから鏡も登場人物にして、自分と鏡、ふたつを書こうと思ったんです」
――そうなんだ。曲の雰囲気と歌詞の世界観とかジャケットとか含めて全部がすごくマッチしてるから、曲を作る段階からまじ娘さん的なイメージを共有しながらやったのかなと思ってたんだけど。
「内容はまったく伝えてなかったからびっくりして。『ここまで合う?』って。自分の中では完全に熱い展開になってました(笑)」
――(笑)すごいね。伝わったってことですよね。
「きっとそうだと思います。ホリエさん、さすがです、ほんとに」
――もちろんホリエさんもすごいんだけど、でも、すべてがまじ娘のものになってるってことなんだと思いますけどね。
「すごいなって思いました。スタイリストさんのこの衣装がなかったら鏡を通した登場人物ふたりの関係性も変わっていたと思うし、全部つながってる。“ダージリン”の中にある《あの娘のドッペルゲンガー》とか《ダージリンに映る私の顔》っていうのも、やっぱどこかしら“mirror”にリンクしてるなって思って」