め組 配信シングル“放課後色”で見えた、超個性的ポップバンドの全貌

め組

2015年夏に結成され、今年2016年には初のフルアルバムのリリースに初のワンマンライブと、いよいよバンドとして本格的に走り始めた5人組「め組」。今後もCOUNTDOWN JAPAN 16/17やJAPAN'S NEXT TURBO 2017など注目の大舞台が控えている彼らから、最新曲となる配信シングル“放課後色”が届いた。甘酸っぱい放課後のワンシーンを切り取った、菅原達也(Vo・G)一流の青春グラフィティを盛りたてるのは、個性豊かなメンバーが作り上げたストレートなバンドサウンドだ。バックグラウンドもこれまでの経歴もバラバラな5人が集まって始まっため組が、ここからいよいよ「バンド」としての物語を描き始めた――そんな手応えも感じさせる新曲を軸に、注目のバンドの「今」を、菅原に語ってもらった。

インタビュー=小川智宏

バンドサウンドが前面に出てしまって、本来やりたいことをやっちゃってるなあっていう気がして恥ずかしい(笑)

――『恵』というアルバムを出して、ワンマンをやって。め組を結成してから最初の目標としていたところに今年は走ってきたわけじゃないですか。そのなかで何か見えてきたものっていうのはありますか?

「僕を除いた4人は技術的には卓越していて、何も言わなくてもできちゃうメンバーだっていうのは事前にわかっていたので、『こういうの持ってんだね。じゃあ、それとは別なことをやりましょう』みたいにやってたら、引き出し以上のことができたような気がして。でもアルバムとか、ワンマンライブとか一括り終わってみたら、本来のバンドスタイルをわざと――『わざと』って変ですけど、やってみたいって欲求が出てきたんですよね。今回“放課後色”を作って、意識せずにまんまバンドサウンドが前面に出てしまったので、本来やりたいことをやっちゃってるなあっていう気がして。恥ずかしいんですけど(笑)」

――だから逆に言うと、『恵』っていうアルバムは実験作だったんだなあって思ったりもするよね。

「お客さんとメンバーのなかでの実験作ではあったと思います。ただ、『実験』って言うほどとっつきにくいものではない、いいものにはなってるなと。そこには自信はあるんですけど」

――菅原くんはいわゆるストレートなバンドサウンドと歌詞、メロディっていうものを「いつかめ組でやりたい」とは思っていたんですか?

「どうなんでしょうね。結局、ストレートなことをやったら、そのまんまのことになっちゃう気がして、あんまりやりたくないなと思ってたんですよ、正直。それの予防線じゃないですけど、この曲、ベースから作ったんですよ。ベースラインを作って、そこから出てきたメロディを拾いつつ、主メロも作ったりとかして。『ベースでくどいことをやってるんだぞ』的なことをデモで固めといて、それをみんなに送って『一筋縄じゃいかねーぞ』っていうのをそこで表現したつもりではいるんですけどね」

――それに対してメンバーはどういうふうに反応してきた?

「意図は伝わったと思います。ベースがイントロを弾いていたりとか、歌詞も気持ちが悪いものなので(笑)。メロディは王道なんすけど、偏屈というか、学校カーストでいう一軍の人たちではない人たち、二軍三軍の人たちの気持ち悪い恋愛観みたいなつもりで」

――変な感じで酔ってるというか(笑)。

「そうなんです。このふたりの主人公、ものすごい気持ち悪いんです(笑)」

――だけど、読み様によってはピュアな恋模様にも見えますが。

「完全にその人たちのなかでは美しいものでありたいと思ってやっているんですけど、傍から見たら『気持ち悪いな』っていう。わりと得意技をやった感はあるんですけど、題名も題名だし。スタッフさんに聴いてもらった時は『夕方とかそういう系に関してはすごいね』『ミスタートワイライト』って言われましたね(笑)」

――(笑)なんで夕方に惹かれるんだろうね。

「なんでだろうなあ。ほんとは嫌なんですけどね。『運転中は眩しいしな』とか(笑)。でも、曲作る時に背景は放課後じゃないけど、夕方っぽい色感はあるかな。書きやすいというか、それが白紙の感じはしますね。まず『夕方』って白紙があって、色を入れていくというか」

「め組」っていう生き物の形がやっと見えかかってきてる

――歌詞もそうだし、サウンドもそうなんですけど、これが作れたっていうのは、め組を結成して1年半ぐらい経って、いろんな意味で「め組」という生き物の形が見えてきたからだと思うんですよね。

「ああ、そうですね。それがやっと見えかかってはきてるんですよね。ほんとにやっとなんですけど。いつもデモ音源は全部のパートをだいたい作り込んじゃうんですけど、今回はキーボードだけやらないでいたんですよ。曲に感情的になりたいし、集中したいっていうのがあったので。それでデモを聴かせたんですけど、出嶋(早紀/Key)がものすごくいい仕事をしてくれて。手数が多いんですよ。僕と出嶋さんのアプローチというか、『俺が真ん中まで来たから、出嶋も真ん中まで来てね』っていうのがうまくいった曲かなとは思ってます。何の注文もしてないし、くどくもなく、サビとかもメロディに寄り添うような形で、出嶋色もしっかりあって一番バンドらしいことをやってるなあと思いました」

――アルバムインタビューの時に、曲を作りながら音でコミュニケーションをしていったという話をしてましたよね。今も同じようにコミュニケーションをしているんだけども、その質が変わってきたような気がするんですよね。

「まだ全然なんですけど、いい意味で言葉数は減ってきましたね。『こういうことでしょ?』みたいなのは空気でだんだんわかるようにはなってきました」

――今までは、とりあえず持ってるもの全部全力で投げてみて、どれが打ち返されてくるかっていうコミュニケーションだったもんね。

「そうでしたね。だから大変だったんすよね。とにかく自分の全部を出して『どれなんだよ!』『これか!』って。それが最近ないから。『これね』って出して、すぐ次に取りかかれるみたいな空気は出来つつありますね」

このバンド、成り立ちとしてちょっと異質なので。だから音楽的に「どうなっていくんだろ」っていうのが楽しみ

――聴いた印象として、たとえば『恵』に入ってる曲は、「め組」ってバンドの作品なんだけども、極端に言えば菅原達也が95%ぐらい背負ってて、あとのメンバーが残りの5%を分担しているというようなバランス感だったと思うんですよ。でも“放課後色”は、そのパーセンテージがだいぶ均されてるというか。

「ああー、そうですね。アルバム完成しました、ワンマンライブやりましたって過程がなければその配分にはできなかったと思いますね。最初っからはできなかったはずなので。このバンドは成り立ちとしてちょっと異質で、始まりが友達からとかじゃないので。贅沢なんですけどね、CDできての、ワンマンできてのその築き方が。でも逆に無いパターンなので、楽しみは楽しみです。特に出嶋はほんと楽しみで、音楽的に『どうなっていくんだろ』っていう」

――出嶋さんの個性がめ組の個性になってきているっていう感じはするよね。

「本人もかなり悩んでると思うんですよ、『どういうアレンジにしたらいいか』って。でもちゃんと確信あって『これでどう?』っていうふうに言ってきたので。その悩みには曇りはないと思うんですよ、アレンジをした時に」

――彼女のピアノが、この曲をある種支えてるというか、曲の色を決めている感じだよね。

「完全に決められましたね、予想だにしなかったけど。出嶋を除いて普通にやってれば、ただのバンドになっちゃうんですよ(笑)。それじゃ発展性には欠くなあという気はするので、ほんとに『出嶋きたな』って。すごい武器だなと思います」

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