6. A Good Sadness

――そして再び浮遊感の強いサイケデリック・ナンバー“A Good Sadness”です。
「この曲はほとんどスタジオでのジャムから生まれたもの。シーケンサーとかドラムマシンが何台もあって、それを一斉に鳴らして、そこで自分達が演奏したものをサンプリングしながらレコーディングしていって、たぶんそのセッションが20分くらいだったんだけど、それを編集して曲らしい構成にしていったという。だから大部分がライヴで、そこへ重ねていったんだ。個人的に最も好きな曲のひとつだな。何だろう……自分達がやりたかったことが自動的に出てきた感じがする。あんまり深く考えずに、成り行きにまかせたらこうなったというか」
――ということは具体的なインスピレーションの源は特になく?
「ないと思う。自分達もどっから出てきたのか分かんないんだよね。今回は、あまりはっきりと他の音楽の影響を意識してなかったし、この曲っぽい音楽を作ろうっていうのも考えてなかった。ああ、でも……ティーンエイジ・フィルムスターズの影響は少しあるかもしれない。ちなみに僕達がよく聴いてるバンドなんだけど、彼らがやってたことの多くは、かわいいのとカオティックなのが同時にくる感じで、そういう部分はかなり影響を受けてるからね」

7. Astro-Mancy

――高速で機械的な動力を感じさせるリズムとファンタジックで甘いメロディ、SFのようにも、御伽話のようにも聞こえる不思議な魅力のあるナンバーですよね。
「これは今作のなかでは最後に書き始めた曲で、ほぼ丸ごとスタジオのコントロール・ルームで作ったんだけど、ほとんど計画性もなくいろんなパートを加えていき、思いつきでレコーディングしながら積み上げていったあとに、曲の方向性を考えて編集していった。アンドリューとミキシング・コンソールの前に座って、卓をそれぞれが担当する領域に分けて、適当だと思われる箇所で音の断片を投入していくという感じで、つまりはほぼライヴでミックスしているという。たぶんこのアルバムの中で僕が一番誇りに思ってる曲じゃないかな。すごく自然に作れたから。レコーディングしてる時のムードも、あんまり考えないようにしよう、できるかぎり自然に物事が起こるままに任せようっていうっていう感じがあった」
――それが今作のひとつのテーマとしてあったということですか?
「うん、そうだね。もちろん編集段階では相当頑張ったけど、曲を作る段階では……あらかじめどういう曲にしようとか考えすぎると、結局はおんなじことを繰り返してたっていう結果になったりすると思うんだよ。ひとつのパターンに嵌まってそこから抜けられなくなるというか。でも今回の作り方は、頭の中をすっきりさせて純粋に音楽が生まれて来る状態にしてて、そこで起こっていることを自分が意図的に決めてるわけじゃなかったんだ」
――ちなみに“Alien”、“Astro”といった本作に散りばめられた宇宙のモチーフはどのような着想から得たモチーフなんですか?
「その部分は意識してたもので、これは僕達がこの世界にいて時々感じるエイリアンみたいな気分というか、いろんなことが不自然に起こるのにみんなはさらっとうまくやれちゃってて、僕達は『何が起こっているんだろう? 理解不能だ』っていちいち考え込んじゃうみたいな、エイリアン的な部分はそういう感情を描いたものだよ」

8. I Love You Too, Death

――ビョークのバイオフィリアのような有機と無機のミクスチャーを感じさせます。この“I Love You Too, Death”、もしくは1曲前の“Astro-Mancy”から『MGMT』は徐々に収束に向かうような感覚を覚えるアルバムです。“Alien Days”から“A Good Sadness”まで自由にカオティックな拡散していったサウンドが、“Astro-Mancy”以降は徐々に、螺旋を作るようにあるべき場所に収まっていくというか。
「この曲も即興がベースになっていて、ある意味トランス状態を生み出そうとしていたというか、だから反復も多いしいろんなことが同時進行してて、必ずしもひとつの中心点があるわけではないんだ。だからある時ひとつの道筋を辿って聴いたとしても、次に聴く時にはそれとは別の線を追いかけてて、全然違うものが聴こえてくるっていうことも起こると思う。実は“Astro-Mancy”にもそういう側面があるよ。この曲から収束に向かっていくというのも、確かにあると思う。曲の順番は明確な理由があって決めたわけじゃないにせよ、この順番が一番しっくりきたわけだからね」
――また、この曲における「Love」と「Death」、“A Good Sadness”における「Good」と「Sadness」のように、『MGMT』には本来反語となるような言葉、感情が敢えて並列で使われていることが多いですが、これはなぜですか?
「それはずっと前からやってることなんだよ。結構そういう歌詞が多くて、たとえば昔作った『We Don't Care』EPにも“We Care”って曲が最初に入ってて“We Don't Care”って曲が最後に入ってたりするんだよね。自分達がよく聴く音楽も、音はすごく楽しそうなのに歌詞はめちゃくちゃ暗いとか、インダストリアル系の音楽でダークかつ恐ろしげなのに実は楽しいとか、そういうものが面白いと思う」

9. Plenty Of Girls In the Sea

――ビートルズが大気圏外で演奏してるみたいな曲ですね(笑)。かつ、本作のポジティヴィティを象徴するナンバーだなと。本作は非常に重層的でカオティックなサウンドのアルバムです。
「この曲は最初にタイトルを思いついたんだけど、単純に楽しそうな曲名でいいと思ったんだよね。ビートルズっていうのは確かにそうだなと思うしポジティヴな部分もあるんだけど、やっぱり結構ダークな部分もある。音楽に関しては、昔ながらのポップ・ソングのようにも聴こえつつそこにインダストリアルなサウンドが入ってくるという感じだよね」

10. An Orphan Of Fortune

――連想されるのはフレーミング・リップス、デイヴ・フリッドマンらしい、と言ったら語弊があるかもしれませんがトリップ感も強烈なナンバーです。本作はプロデューサーに『オラキュラー・スペクタキュラー』以来となるデイヴ・フリッドマンを迎えました。前作のソニック・ブームとの作業に比べて、フリッドマンとの作業で特徴的なことって何ですか? また、フリッドマンのファーストの時と異なるアプローチはありましたか?
「デイヴとの作業で僕達がすごく好きなのは、彼がすごく頭の柔らかい人だというところで、常に音楽が自然に成長していくプロセスを大事にしてて、だから絶対に、ひとつのカテゴリーに無理矢理押し込めたり力づくである方向に持ってったりしない。もう最後までひたすら励ましてくれるし、ひたすら気長に付き合ってくれるんだよね」

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●大阪
2014年1月8日(水) なんばHatch
OPEN 18:00/START 19:00
サポート・アクト:MELT-BANANA
TICKET ¥6,500(1Fオールスタンディング・2F指定・税込・別途1ドリンク代)

●名古屋
2014年1月9日(木) 名古屋ダイヤモンドホール
OPEN 18:00/START 19:00
サポート・アクト:MELT-BANANA
TICKET ¥6,500(オールスタンディング・税込・別途1ドリンク代)

●東京
2014年1月11日(土) 新木場スタジオコースト
OPEN 17:00/START 18:00
サポート・アクト:MELT-BANANA
TICKET ¥6,500(オールスタンディング・税込・別途1ドリンク代)

更なる公演の詳細は以下のサイトで御確認ください。
http://www.creativeman.co.jp/artist/2014/01mgmt/

提供:クリエイティブマンプロダクション

企画・制作:RO69編集部

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