――ところで、アニメの主題歌になった“泥の雨”なんですが、実はこの曲からアルバムが始まったそうですが。

和嶋　これは現代の怖さを歌ってみたいと思ったの。何が恐怖かはあからさまに言えませんけれども。アニメになるからいいなと思ったの、アピールできるから。実際に、ある時自分のバイクに、泥の雨みたいなものがついていて、拭いても次の日もそうなってるし、怖いな～と思って。

鈴木　まだついてるの？

和嶋　いや取れたけど。怖いじゃん、そういうの（笑）。実際は、怖い現実の中にいるよって意識してほしいぐらいのつもりで書いたんですけど。これを書いたら、自分は現代の怪談みたいな曲を作ったなと思って。怪談という切り口はすごくいいなと思って。そして曲調も、ヘヴィさの中にポップさを入れるというのをやってみたんですけど、この方法論もいいと思いまして。あと侘び寂びとかも中間部には入れられたんで。この曲から、トントンいける感じがした。

――歌い始めに≪黒い雨≫と出てきて、中程で≪キノコ雲≫がわいて、こういう言葉をちりばめることで、この時代の怖いものとは何かと――。

和嶋　言ってみたかった。現代がこういう時代になってしまったがために、狼はいなくなってしまいましたし、雪女もほとんど出てこなくなった。そういう、愛のある存在というか悲しい存在というか、悲しさも愛の裏返しなんですけど、そういうものがどんどんなくなってるのかもしれないと思いまして。現代のこともありつつ、失われてしまったこの人たちのことも書いてみたい。そういうのも必要なんじゃないかなって。それも表せられればと思って、雪女とか、芳一とか書いてみたんです。

――“超能力があったなら”というのは？

和嶋　これは現代の怪談ですよ。それでいいのかなっていう歌ですから。もしかして昔、人間が持っていたかもしれない怪談パワーですよ。それが自分にあったら、現代の恐ろしいものをなくしたほうがいいんじゃないかなって。曲調が、シンプルでパワーのある曲だったので、古い怪談というより現代の怪談のほうが合うと思って。怪談も大きく括ればオカルトなんで。

――この歌詞には≪原爆≫≪水爆≫とストレートに出てきますね。

和嶋　これならストレートに出しても平気だろうと。思い切り出しました。こういう詞とか表現って、それをあからさまに肯定したり否定するんじゃなく、提示するのがいい在り方だと思うんだよね。こういう状態だから、どう思います？って。というのが僕にとっての歌かな。メッセージを入れるとすれば。絶対だ！というと押し付けになる。そこまでやっちゃうとアートじゃない。普遍性というか、示唆してあげるのがいいと思うんだよね。

――その辺は、和嶋さんが大学で専攻した仏教的な教えに近い気もしますね、明快な答えでなく道を示す的な。

和嶋　初期の仏教は、そうですからね、悟るのは本人でしかないから、それを言ってあげるしかない。